『鬼滅の刃』無惨を追い詰めた鬼殺隊の「武器」とは? 22巻ネタバレ徹底解説

『鬼滅の刃』無惨を追い詰める隊員たちの“思考”

 ジャンプ漫画の主人公が死の間際から復活することでパワーアップする場面は多いのだが、そこでみせる強さの多くは感情の爆発による本能の開放だ。それは『呪術廻戦』や『チェンソーマン』といった近作でも同様で、わかりやすく言うと、ブチ切れて強くなる。つまり、自分自身も「鬼」になるということだ。

 しかし炭治郎は外見こそ、無惨の細胞によって醜い姿になり「鬼」に近づくのだが、思考は明晰で「今自分にできることを精一杯やる」と覚悟を決めて、必死で考えながら戦っている。これは炭治郎だけでなく、他の仲間たちも同様である。本能のままに戦う利己的な鬼に対し、鬼殺隊は利他的かつ理知的。極限状態の中、柱から末端の隊員まで全員が最善の一手を模索しながら行動し、後に続く仲間たちのためなら犠牲も厭わない。

 無惨と戦う炭治郎や柱はもちろんこと、自らの命を犠牲にして活路を拓いた珠世や産屋敷耀哉、傷ついた仲間を治療するために奔走する喩史郎や村田。一般市民を巻き込まないように「地盤沈下です。危ないから避難してください」と言って誘導する後処理隊員の「隠」。

 「鬼狩りという組織が数珠繋ぎとなって」「それ自体がひとつの生き物のように私を絡め取らんとしている」と無惨のモノローグによって語られるのだが、それぞれの場所で自分の役割を必死で果たそうとする小さな一手一手の連なりが、じわじわと無惨を追い詰めていく様を、本作は丁寧に見せている。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『鬼滅の刃』既刊22巻
著者:吾峠呼世晴
出版社:集英社
価格:各440円(税別)
公式ポータルサイト:https://kimetsu.com/

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