『ONE PIECE』“海侠のジンベエ”、なぜ麦わらの一味に必要? 戦力向上だけじゃない、その深い理由

『ONE PIECE』ジンベエ、なぜ一味に必要?

 ジンベエが一味に加入することによって変わるのは、ここまでに記述してきたものだけではない。彼が必要な、さらに深い理由があるように思う。それはやはり彼が魚人という、これまで人間たちに虐げられてきた“被差別者”であるということだ。実力主義の大海賊時代において、異なる種族の者同士が手を組んでいることは珍しくはないが、ジンベエは“種族差別”という大きなトラウマを背負う象徴的な存在である。そんな彼が利害関係を超えたかたちでルフィの下についた事実は、今後の展開の中で大々的に取り上げられそうだ。

 それに、“魚人と人間”の関係で言えば、やはりナミとの関係性に目を向けないわけにはいかない。いまや完全にわだかまりがとけたが、ジンベエたち魚人がかつて人間たちから恐怖を植え付けられてきたように、ナミにとっては魚人がトラウマの対象である。彼はアーロンという部下を介して、間接的にナミに恐怖を与えていたのだ。しかしそのナミも、ジンベエ加入に対して黄色い声を上げている様子が描写されている。“海侠のジンベエ”の一味加入が世に与える驚きは、たんなる一味の飛躍的な戦力向上だけではないのだ。これから彼は、多くのものを『ONE PIECE』にもたらすに違いない。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

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