三浦春馬のエッセイに綴られた想いとは? 『日本製』文芸書週間ランキング1位に

三浦春馬が綴ったエッセイで想いにふれる

 4位には阿部智里氏『楽園の烏』。2012年、早稲田大学在学中に最年少で松本清張賞を受賞した、『烏に単は似合わない』から連なる「八咫烏シリーズ」の最新作にして、第二部開幕を告げる一冊だ。

 累計130万部突破の同シリーズは、山神によって創られた〈山内(やまうち)〉と呼ばれる異界を舞台に、人間の姿に変化する八咫烏の一族を描き出すファンタジー小説。一族を統治する「金烏(きんう)」に誰が嫁ぐのかという入内バトルが描かれたのがデビュー作である『烏に単は似合わない』なのだが、松本清張賞受賞にふさわしい、緻密にはりめぐらされた伏線とラストのどんでん返しには度肝を抜かれてしまう。

 そして、この伏線とどんでん返しこそが、このシリーズの持ち味なのである。架空の異世界を描いたいわゆるハイファンタジー作品かと思いきや、やがて、私たちの生きる現実と彼らの世界が通じていることが明かされていく。続刊では、八咫烏たちを喰らう凶暴な大猿との戦いを通じて、少しずつ明かされていく世界の謎に、読者はみな興奮し、虜になってしまうのだ。

 そのひとりが、女優の浜辺美波氏。9月7日、『楽園の烏』を手にした写真とともに、彼女はこんなつぶやきをTwitterに掲載。7.8万ものイイネが集まった。

 これを機に同シリーズに興味をもったものの「今から既刊全部読むのはハードルが高い……」という人も少なくないだろう。だが、安心してほしい。もともと阿部氏は、第一部最終巻『弥栄の烏』をのぞいて、基本的にどの巻から読んでも理解できる・楽しめるつくりにしていると公言しており、『楽園の烏』も例外ではない。

 むしろ、本作を続編ではなく、本当の始まりとして読むこともできる構造となっている。まずは『楽園の烏』を手にとり、その世界観に夢中になったら、ぜひとも過去編として第一部にも遡っていただきたい。

■立花もも
1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行い、現在「リアルサウンドブック」にて『婚活迷子、お助けします。』連載中。

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