集英社「マンガテック2020」の狙いは? メンターに訊く、マンガビジネスの新たな可能性

集英社「マンガテック2020」狙いは?

デジタル領域に限定しているわけでも、ジャンプ関係に絞っているわけでもない

――なぜ「マンガテック」という呼称なんでしょうか? サイトを拝見していても今日のお話をうかがっていても、テック以外の多様な業界とも組みたいような印象を受けますが、「テック」と付けるとテック系企業ばかり集まってしまうのでは?

森:すばらしい指摘ですね。新しいものはデジタル領域から生まれるという前提があったのですが、言われてみればそうとも限らない。ですから今回やってみて「テックと銘打たれていなければもっといいアイデアがあったのに」といった反応があれば、次回以降は名前が変わるかもしれません。ただ今回は「新しい企画を求める」ということをわかりやすくキャッチーに伝えたかった。「集英社アクセラレータプログラム」と言っても直感的にはわからないので語呂で「マンガテック」にしたところがあります。

――集英社サイドのメンターは編集者だとジャンプ系の方ばかりですが、サイトを見ると「マンガ」「キャラクター」といった言葉は並んでいるものの、「ジャンプ」という単語は出ていません。これは?

森:会社として事業部単位、編集部単位で予算決めをしており、今回は新規事業部と少年ジャンプ編集部合同で企画を立ち上げたから、という以上の理由はありません。まずはデジタル領域で社内のなかでも圧倒的に先行している「ジャンプ+」からチャレンジをして、良い成果が生まれるのであれば、来年以降、様子を見ながら少女マンガや青年マンガの人にも入ってもらおうと。ただし名前を「ジャンプテック」にすると間口が狭くなるので「マンガテック」にしました。もちろん、マンガ編集部全体を束ねる役員の決裁は入っています。応募者にもジャンプ絡みに限らないチャレンジを広く求めています。

これからも失敗をおそれずチャレンジし続けていく

――8月20日に行われたプログラム説明会の参加者にはどんな方がいましたか?

森:年齢は幅広くご参加いただいていますが、若い応募者の比率が高く、大学生もいらっしゃいました。男女比率では男性がかなり多く、それについてはメンターに男性が多かったせいかなと、反省しています。女性にもぜひ応募いただきたいと思っています。

――参加者との認識のズレを感じた部分は?

森:そこまでなかったですが、「アイデア1本で尖りまくっているやつでも通りますか?」という質問はありました。「事業化しにくいものは通りづらいです」とは言ったものの、いずれにしても一度投げて欲しいですとお伝えしました。

 あとはサイトでも「特定作品でしか成立しないような事業アイデアは受け付けない」と断っているものの「有名作品との協業可能性はあるのでしょうか」という質問はやはり出ましたね。

――「集英社と組むメリットとは?」と考えたら、すでにある人気作品・作家と組みたいと考える人が圧倒的多数ですよね。

森:それについても「基本的には新しいビジネスモデルやサービスを求めているものの、有名作品を前提としたものでも本当に良いアイデアであれば、このプログラムに関係なく作家に提案します」とは伝えました。そういうことも集英社主宰のプログラムに参加するメリットだと考えてもらえればありがたいなと。

――今のところの手ごたえは?

森:想像以上でして、9月8日時点で50件以上応募がありました。中身はまだ精査できていませんが、応募数に関する目標はすでに達成しています。事業ドメイン的にはやはりデジタル系からが多いものの、観光系などからも応募がありました。

――参加予定者に限らず、マンガテックに興味がある人に向けてひとことお願いします。

森:集英社は雑誌の新連載に関しても、たとえ短期に終わってしまう作品であっても、それは失敗ではなく、立ち上げたこと自体が評価される会社です。サービスにおいてもそこは変わらず、新サービスを立ち上げて失敗したとしてもバカにする人はいません。

 マンガテックに限らず、私たちが想いもよらないアイデア、ビジネスモデルをご提案いただき、いっしょに成長していければと思っています。

■関連情報
「マンガテック2020」公式サイト

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