『りゅうおうのおしごと!』しらび3連覇なるか? イラストで見る、ラノベ界の現在

イラストから見えてくるライトノベルの今

 永遠の安泰などない世界だけに、前年のランカーたちが上位に躍り出る可能性も多分にある。中高生の圧倒的な支持を集め、2020年の文庫部門第4位となった『ようこそ実力至上主義の教室へ』は、イラストを手がけるトモセシュンサクが2019年版で10位に登場し、2020年は一気に3位まで駆け上がった。すべてがポイントで決まる学校で、才能を隠しつつ周囲を動かしDクラスを勝利に導く主人公の綾小路清隆とクラスメートの軽井沢恵は、2020年のキャラクター部門で男性キャラ、女性キャラの第1位を獲得した。作品もキャラもイラストも人気の盤石ぶりでトップを狙う。

 2020年版の結果を元に今年の状況を見るなら、第2位のフライは、担当する屋久ユウキ『弱キャラ友崎くん』(ガガガ文庫)、第4位の溝口ケージは鴨志田一『青春ブタ野郎』シリーズ(電撃文庫)への支持で上下に振れそう。暁なつめ『この素晴らしい世界に祝福を!』シリーズを手がける第5位の三嶋くろねは、5年連続ラインランクインの安定感とシリーズ完結の話題から、引き続いての支持を得そうだ。

 ダークホースを勝手に予想するなら、三河ごーすと『友達の妹が俺にだけウザい』(GA文庫)のイラストを手がけ、2020年に第22位につけたトマリが、竹町『スパイ教室』(ファンタジア文庫)の評判と共に上がってくるかもしれない。第32回ファンタジア大賞の大賞作品で、世界最強のスパイを師匠に持った少女たちが鍛えられ、戦いに赴くストーリー。登場する少女スパイたちを特徴的に描いたイラストは、豪華声優の声がついたプロモ映像となり、配信されて大勢の目に触れた。追い風となるか。

 二語十『探偵はもう、死んでいる。』(MF文庫J)のイラストを担当するうみぼうずも、ランク外から一気に上位を狙ってきそうだ。シエスタという少女探偵が死に、残された助手の君塚君彦が、シエスタの意思を継いだ夏凪渚らと共に敵組織《SPES》との戦いに舞い戻る。シエスタと君塚の2人が必ず描かれた、キャラの関係性を想像させる表紙絵の美麗さで目を引くシリーズだけに、どこまで食い込めるかが気にかかる。果たして結果は?

『このライトノベルがすごい! 2021』は9月23日(水)締め切りで投票を受付中だ。(アンケートフォーム https://questant.jp/q/konorano2021

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

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