『女の園の星』和山やまが語る、独自の作風が生まれるまで 「ギャグ漫画はローテンションでもいいと気づいた」

『女の園の星』和山やまインタビュー

中村先生には結構、隠れファンがいる

――キャラクター作りの際は、一人一人に感情移入していくのか、それとも自分とは切り離された存在として描いているのでしょうか?

和山:(感情移入するのではなく)私が理解できないものを描いていたほうが楽しいですね。自分がでしゃばって自分の趣味嗜好を入れる部分ではないかなと。

――読んでいると「こういう人いる!」という小ネタが多く、キャラクターの解像度が高いなと感じます。こういうネタは人間観察などを元に作るのでしょうか?

和山:そうですね。あまりじろじろ見るのは失礼ですが、手の癖や目線などを見るのは好きです。

――例えば、星先生にはモデルがいるのでしょうか?

和山:モデルはいないです。自分の好きなものをそのまま描きました。私はメガネが好きなので、まずメガネが絶対と、黒髪。ビジュアル面では、中村倫也さんとか吉沢亮さんをイメージしています。あんなに綺麗には描けていないですが……。

――作品を描いてみて、ご自身に似ていると感じるキャラクターはいますか?

和山:似ているキャラはいないんですけど、星先生の考え方は私寄りかなと思います。人のやることに心の中で1人で突っ込んで1人で終わらせる、みたいなところは似ているかもしれません。

――同僚の小林先生は星先生とはまったく違うタイプですが、小林先生はどのように作られたのでしょうか?

和山:最初は星先生にとって嫌な、対照的なキャラを描こうと思っていました。悪い人ではないけどパリピで、ビーチにいるような男。無駄に明るくて、人のプライベートにズカズカ入り込んでくるような。でも描いていくうちに、意外と二人仲良くやってるなと。

――二人で飲みに行っているシーンなどを見ると、わかりあっているというか、お互いの変なところを許容しあってるように感じました。

和山:星先生も気を使わない相手なのかなと思います。ほかの先生には気を使って笑顔だったりすると思うんですけど、小林先生には気を使わないからこそ、失礼な態度も取れるし、仏頂面で好き勝手言えるのかなと。

――大学生の頃だったら星先生は小林先生と仲良くなれなかった?

和山:一番遠いところにいたでしょうね(笑)。

――まだ出番は多くないですが、中村先生の存在も気になります。

和山:中村先生には結構、隠れファンがいるので、今後の出番を考えているところです。

野中英次先生の漫画の影響が大きい

――和山さんの作品は、独特のテンポや、キャラクターの細かい部分にフォーカスしていくところが特徴かと思います。この作風はどのように生まれたのでしょうか?

和山:最初にギャグ漫画を描いていた時は、今と違ってテンションの高いギャグを描いていたんです。テンションが高くてバカっぽいキャラがいないとギャグ漫画にならないと思っていたので。

 でもある日、当時の担当編集さんに渡された、野中英次先生の漫画『魁!!クロマティ高校』(集英社)を読んですごく元気をもらって。絵はシリアスでもいける絵柄なのに、それでギャグをやっているのが衝撃で。ギャグ漫画ってローテンションでもいいんだと気づきました。私のなかの理想のギャグがそこに全部詰まっていて、私もこれ描きたい!と思って自分の中で昇華していきました。ギャグの形としては野中英次先生の漫画の影響が大きいですね。

――絵柄の話が出ましたが、和山さんは最初から今のような絵柄だったのでしょうか?

和山:最初は全然違っていて、少女漫画風の絵を描いていました。線も細くてマーガレット寄りだったのですが、古屋兎丸先生の漫画を読んでから、過去の絵は全て捨てる勢いで真似して描きました。

――いわゆる「流行りの絵」とは違うタイプなので、少女漫画の絵柄から切り替えていくのは勇気ある決断のようにも感じるのですが、あくまでも自分の描きたいものを描かれていったのでしょうか。

和山:そうですね、それが一番楽しいです。

ブロマンスと呼ばれるものを描いていきたい

――今後どのような表現をしていきたいなどの展望はありますか?

和山:舞台が異世界であろうとどこであろうと、男2人の関係性というか、いわゆるブロマンスと呼ばれるものを描いていきたいと思っています。そこを好きと言ってくださる方もすごく多いですし。あとは、ホラー漫画にしろ恋愛ものを描くにしろ、ユーモアは忘れないようにしようと思っています。常に読んでいて肩の力が抜けるようなものを描きたいですね。

――連載を始めたことで、読者の方からのリアクションも増えていると思いますが、自分のやりたいことと、読者が求めるものとのバランスはどのように取っているのでしょうか?

和山:それが好き、と言われたら書いちゃいますね。「こうしたほうがいい」というのをそのまま受け入れるわけではなくて、私が描いているものに対して「この関係がいい」と言っていただけたら、それをもっと強化していこうと。まず自分のやりたいことが基本にあって、それを描いていくというのが大きいです。

■書籍情報
『女の園の星(1)』
和山やま 著
発売中
価格:本体価格680円+税
出版社:祥伝社
特設サイト:https://www.shodensha.co.jp/onnanosononohoshi/
(C)和山やま/祥伝社フィールコミックス

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