セックスレスの夫婦に“公認不倫”はアリ? 『1122』が問う、“イマドキの夫婦”のリアル

『1122』が描いた、イマドキの“結婚”の形

 仕事が忙しくなった一子は、どうしてもその気になれず、二也からの夜の誘いを断った。それだけならまだしも、「男性はいろいろあるもんね、風俗とか。それにおとやんってモテなくないっしょ」とあたかも“性欲くらい自分で何とか処理してよ”と言わんばかりの言葉で拒絶。たかがセックス、されどセックス。

 その行為を、ただ自分の欲を満たすためのものではなくコミュニケーションの一環として考えている二也の心を折るには十分の言葉だった。けれど、日本国憲法第24条で<婚姻は、(中略)相互の協力により、維持されなければならない>と規定されているように、関係維持の観点から見れば、双方にメリットがある公認不倫も一つの手だろう。特に複雑な家庭で育った一子にとっては、二也と穏やかに過ごすことが大優先なのだ。

 けれど、人間はそんな簡単に割り切れるものではなく、本作は家庭よりも美月との時間を優先するようになり、婚外恋愛に現を抜かす二也に一子がモヤモヤし始めるところから物語が展開していく。一子は二也からセックスを拒まれ、いつの間にか立場が逆転。悩んだ末に、一子は今話題の“女性用風俗”を利用する。そうして、性の問題を家庭の外へと放り投げた2人は末永く暮らしましたとさ、めでたしめでたし……。とはならないのがこの漫画だ。

お互いのお誕生日のこと楽しみに考えたり からだのこと大事に思って心配したり
食べたり飲んだりおしゃべりも楽しめるのに
いちこちゃんたちはセックスだけとってもむずかしいんだね
――(『1122』/渡辺ペコ)

 夫婦、パートナーとの形は年々多様化している。一子たちのように対等な関係を築いている先鋭的なカップルもいれば、“主人”は外で働き、“嫁”は家庭に入るといった昔ながらの婚姻関係を結ぶ夫婦もいる。それ以前に結婚する・しないも本人たちの自由で、現代ではあえて結婚せず、パートナーとして共に暮らす人たちも増えた。多様化の一方で、SNSを使って他者の生活にアクセスできるが故に、正しい・正しくないという観点で他人、そして自分たちの関係性をジャッジしてしまいがちだ。でもきっと正解なんてどこにも存在せず、どれだけ双方が幸せに暮らせる方法を見つけるか――だと思う。

 一子と二也もブレブレではあるが、最後まで互いが納得できる道を探し続けた。その先にどんな決断を下したのかは、実際に『1122』を読んで確かめてほしい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■書籍情報
『1122』(モーニングKC)7巻完結
著者:渡辺ペコ
出版社:講談社
https://morning.kodansha.co.jp/c/1122.html

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