BTSの物語を拡張する『GRAPHIC LYRICS』シリーズ イラストレーターとのコラボで示す、本の新たな表現

BTS『GRAPHIC LYRICS』シリーズレビュー

 以前もWebトゥーン「花様年華 Pt.0 <SAVE ME>」についての記事で〈このように、さまざまなメディアミックスで世界観を拡張していく手法はゲームやコミックなど2次元の分野では一般的だ。特に現代で一般的なスマホやオンラインゲームでは旧来の様に特定の物語の中を読み進むというよりは、攻略する事で得られる断片的な情報からプレイヤー側がストーリーの細かい部分を想像して補完出来るスタイルが多い。使用キャラによって同じ時間軸の中で視点が変わっていく事で同じエピソードを多面的に見られたり、微妙な選択肢の違いで異なる展開になるような多元性も特徴だ。モノローグや日記というインタラクティブな表現を多用し、楽曲・MVなどの映像・CD封入物などでストーリーの断片を見せる、あるいは隠す事でユーザーの知りたいという欲望や「考察」という妄想や想像力を刺激するというやり方も含め、「花様年華」の手法は多分に二次元カルチャー的だ。そのようなやり方をコンセプトやMVに仕込んだ例は過去にもあるが、実際に具体的な派生作品とするケースは珍しい〉と言及したことがあるが、BTSの『GRAPHIC LYRICS』シリーズは、既存のファンに対してはイラストレーターの紹介ツールにもなっている。

 多様なイラストレーターの参加により、既存のファン界隈以外にも現在のBTSの表現の根幹でもある世界観を拡張して間口を広げようとするBigHitが続けてきている手法の延長上にあるものだろう。

 日本ではアニメやコミックの分野でおなじみだが、KPOPの世界ではまだ珍しいやり方と言えるだろう。絵本の様によりビジュアルに特化したメディアであることで言語の障壁は低く、登場する韓国語も1冊あたり1曲分の歌詞だけなので、語学学習初心者には学習のサブテキストとしても応用できそうだ。特別にファンではなくてもイラストそのものが気になる人や、「モノ」としての本が好きな人にもおすすめできるような内容と言えるだろう。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

■書籍情報
『 GRAPHIC LYRICS』シリーズ

https://bts-officialshop.jp/collections/bts-graphic-lirycs

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