爆発事故、人体実験、毒ガス兵器……『ONE PIECE』パンクハザード編は現実社会の投影か

『ONE PIECE』パンクハザード編の社会性

 このエピソードの連載期間は2012~13年だが、おそらく2011年に福島で起きた原発事故のイメージが、投影されているのだろう。正義の味方を自認する世界政府の傲慢な描写には「世界の警察」を自認しているアメリカを思わせるものがあるのだが、現実の世界で起きている陰惨な出来事が反映された社会性は、ファンタジー漫画である『ONE PIECE』の世界観に奥行きを与えている。

 物語は、ルフィたち麦わらの一味とワノ国のサムライ、スモーカーが率いる海軍のG-5支部、パンクハザード島を支配する科学者シーザー・クラウン、そして、七武海のトラ男の4つ巴の戦いとなるのだが、ルフィとトラ男が同盟を組み、海軍と一時共闘したことでシーザーに勝利する。

 トラ男は、ある目的のためにシーザーを捕獲したのだが、この戦いで「最悪の世代」と呼ばれたルフィとトラ男が組んだことで、海賊たちの勢力図は激変。物語は、新世界を統治する四皇VSルフィ率いる「最悪の世代」という世代交代をめぐる戦いへ発展していく。

 複雑で社会性のある物語を手加減することなく展開できるのは、作者が自分の才能と読者を信頼しているからだろう。王者の風格、もとい“覇気”を感じさせる漫画である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『ONE PIECE』既刊96巻
著者:尾田栄一郎
出版社:株式会社 集英社
https://one-piece.com/

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