『ハイキュー!!』及川徹の存在の大きさーー主人公たちに影響を与え続ける“大王様”の背中

『ハイキュー!!』及川徹が物語を動かす

日向が思い出させた 「バレーボールは楽しい」という初心

 及川は、卒業を控えた高校3年の時「バレーを続けるか迷っていた」。そんな及川は、セッターを目指したきっかけでもある選手で、現在は監督をしているホセ・ブランコに相談に行く。そこで「全ての正しい努力を尽くしてからで遅くない」と諭され、ホセ・ブランコの元でバレーをするためアルゼンチンへと渡った。

 一方『ハイキュー!!』の主人公である日向は、烏野高校でのバレー生活を経て、単身ブラジルへと旅立つ。本格的にビーチバレーを始めたものの、異国での修行は困難を極める。ルームメイトともうまくコミュニケーションが取れず、バイトでも怒られ、妹がプレゼントしてくれた財布もなくしてしまう。そんなときに日向が再会した人物こそ、チームの遠征でブラジルにきていた及川だった。

 日向と及川は食事を共にし、ビーチバレーをする。日本ではネットを挟んだ敵同士だった2人が、味方としてプレーする姿はなんとも感慨深い。

 異国の壁にぶつかっていた日向は、及川の才能を目の当たりにして目を輝かせ、持ち前の「元気」と「やる気」を取り戻していく。しかし、それは及川も同じだった。

 日向がブラジルで感じていた苦しみを、及川はすでに経験積みだったのだろう。「上を目指す以上、苦しいことのほうが多い」と話していた及川は、自身がそれでもどうしてバレーボールを続けるのか、改めて気がつく。

「楽しいが俺を引っ張ってしまう」

 苦しいことの合間に、ときどきやってくる「楽しい」が及川にバレーを続けさせる。どんどんと強くなる及川がいることで、日向と影山も強くなっていく。及川は、日向と影山に先んじて大きな壁にぶつかり、それを乗り越える姿を背中で示してきた先輩であると同時に、彼らのよきライバルでもある。その関係は、お互いに影響し合って高みを目指すことができる最上の人間関係だ。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊43巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

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