『ジョジョ』や『幽遊白書』で確立された異能バトルの進化系 “不死”と“不運”で戦う『アンデッドアンラック』の新しさ

異能バトル漫画の進化形『アンデラ』

 今や異能バトルは、ジャンプの枠を超えて日本のフィクションに定着したと言っていいだろう。だが一方で、近年のジャンプ漫画では異能バトルの持つゲーム的な面白さは弱まっている。無論、堀越耕平の『僕のヒーローアカデミア』や芥見下々の『呪術廻戦』のような作品もあるのだが、それらの作品における異能バトルは世界観を構成する一要素といった感じで「バトルそのものの面白さ」を追求する流れは小畑健(作画)と大場つぐみ(原作)による『DEATH NOTE』と、西尾維新が原作を担当し暁月あきらが作画を担当した『めだかボックス』で進化の袋小路に入ってしまったように見える。

 そんな中、『アンデッドアンラック』が面白いのは「不死」と「不運」をベースに新しい異能バトルを見せようとしていることだ。「不死」はともかく「不運」を主人公の能力にするのは珍しく、展開される斬新なバトルに毎週驚かされるのだが、同時に描くのは毎週大変そうだなぁと思う。

 連載では細かい設定が明らかになり更に世界観が広がっていくのだが、ここまでアイデアを出し惜しみしていないと「続ける気があるのか?」と思ってしまう。少年ジャンプは読者アンケートで人気が決まり、人気が低いとすぐに打ち切りになる。だから最初の10週は打ち切りを逃れるため、ありとあらゆる策を作者が尽くすのだが、序盤でここまで出し切ってしまうと、人気が定着する前に作品自体が燃え尽きてしてしまうのではないかと心配になる。

 ひょっとしたら作者は長く続ける気がないのかもしれないが、これだけ面白いのだから、できれば長く続けて欲しいものである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『アンデッドアンラック』1巻
著者:戸塚慶文
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/undead.html

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