池上彰×増田ユリヤ、コロナ禍で今すぐ伝えたかったこと 「生きる希望は歴史にあり」

池上×増田『感染症対人類の世界史』レビュー

全世界で新たな試みに向かうべきとき

 ちなみに、「今も続く感染症との戦い」と題された最終章が、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが3月に『「TIME』誌に寄せた文章(「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を」)の引用で終わるように、その最後に添えられた池上の言葉が「私たちは今、歴史から学び、全世界で新たな試みに向かうべきときにきているのではないでしょうか」であるように、ここへきて「歴史学者」の言葉に耳を傾けること、あるいは「歴史」そのものに目を向け、そこから何かを学ぼうとすることは、昨今ひとつの大きなトレンドとなっている。日々情報が更新され、明日をも知れぬ……とは言わないまでも、中長期的な予測がまったく立たない、まさしく「未来が見えない」状態にある現在。短期的な物の見方から少し離れ、長期的・俯瞰的に「歴史」を眺めてみることは、メンタルヘルス的にも、非常に意義のあることのように思われる。未来とは「見る」ものではなく、我々が「作り上げていく」ものなのだから。その際に、良くも悪くも参照するべきは、やはり過去の「歴史」になるのだろう。本書を作るにあたってスタッフ一同が導き出した「生きる希望は歴史にあり」という結論は、まさしくそのことを表しているように思えた。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twtter

■書籍情報
『感染症対人類の世界史』
池上彰×増田ユリヤ 著
価格:本体860円+税
出版社:ポプラ社
公式サイト

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