まずは自分が「クズ」と認めるのが大事? カレー沢薫『クズより怖いものはない』には多様性社会へのヒントが詰まっている

『クズより怖いものはない』を読んで

 「みんななかよく」「努力すれば報われる」という言葉は、もちろん理想的ではある。だが、現実には「なかよくなれない」と見切りを付けること、「いくらはたらきかけても変わらない」と立ち去ることで、解決できる平和があるのだ。「いい人」でいようと思っての行動が、他者からは「クズ」と思われることもあるということ。そう、「クズ」である側面は、言い換えれば「個性」とも言い換えられる。

 軽妙な語り口で綴られる本書を読み進めていくと、「クズ」と呼ばれる所業の中には、活かし方によっては、十分「長所」になるうるものだと気づくはずだ。人は欠点から目につくからこそ、本書では「クズ」と称しているが、1人ひとりが持つ「個性」に他ならない。自分と違うからといって、その「個性」に対して過剰に反応したり干渉したりせず、自分なりに冷静に対応できる距離を取ること。それは、多様性のある社会で、人々が共生していくヒントそのものだ。

 また、本書では「クズ」図鑑だけではなく、周りが「クズ」ばっかりに見えたときの警告、自分の「クズ」さを管理する方法など、対処法までついてくる。自分のいる環境が危うくないか、自分の「クズ」っぷりが暴走していないか、定期的なセルフチェックにも使える。誰もがきれいごとでは生きられない世の中だからこそ、自分なりのライフハックを。「クズ」を笑えるうちに、ぜひ手にとってみてはいかがだろうか。

■書籍情報
『クズより怖いものはない』
著者:カレー沢薫
出版社:大和書房
価格: 本体1,300円+税
<発売中>
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b487711.html

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