『薔薇はシュラバで生まれる』は少女漫画版『まんが道』かーー70年代少女漫画の内幕にあった輝き

『薔薇はシュラバで生まれる』レビュー

「すでに描いていない先生方は多い」という世界

 また、そうした笑いと夢があふれる描写の数々の一方で、本作ではなかなかシビアな漫画界の実情もさらりと描かれている。「当時アシをさせていただいたけれど、すでに描いていない先生方は多い。あの頃は20代のうちに辞めてしまう漫画家さんも多かったのです」。柔らかい文章で書かれてはいるが、これは「あの頃」のみならず、いまも変わらないプロの世界の厳しい現実だ。私もかつてとある週刊漫画誌の編集者だったのでよくわかるが、毎年、多くの漫画家の卵がデビューし、一瞬の輝きを見せては消えていく。当たり前の話だが、誰もが「花の24年組」になれるわけではないのだ。だが、それでも諦めずに漫画が好きだという気持ちを持続させることができるならば、引退から30年を経て爽やかなスマッシュヒットを放った本書の作者のように、なんらかの道は開けるかもしれない。薔薇の大輪を咲かせるのに遅すぎるということはないのだ。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69

■書籍情報
『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』
笹生那実 著
価格:本体1,091円+税
出版社:イースト・プレス
公式サイト

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