『ランウェイで笑って』長谷川心こそ“努力の人”だーーモデルからデザイナーへ、覚悟の転身に迫る

『ランウェイで笑って』長谷川心の努力

長谷川心が本当にやりたかったこと

 心を一言で言い表すとしたら、「努力の人」だ。そんな彼女の心の情熱、そして競争心を揺り動かしたのは、皮肉にもモデルの仕事で出会った服飾業界。「本気で服を作るひとになりたいんです…‼」と、初めて自己主張をした。彼女の真の姿に気づき、その背中を押したのは、千雪と育人だった。無理だと言われても何度でも立ち向かい、小さな目標を実現していく二人の姿に突き動かされた心は、デザイナーとして通学している服飾芸華大学の学園祭で行われるファッションショーに1年生の身で参加。最優秀賞の座に輝き、モデル引退とパリ留学、そしてブランド立ち上げの権利を手にする。

 見えていなかっただけで、モデルとしての心も、まったく努力をしていなかったなどということはない。引退後、自堕落な生活を送り少し太ったと言う心を見ると、モデルであったときは常に体型を保つ努力をしていたのだということがわかる。芸華大学に入学してからわずか半年の間に、家の中はすべて服作りに必要なもので埋め尽くされ、暇さえあれば服作りの練習をしていたことがうかがえる。さらに、芸華祭で千雪がモデルを務めることが決まったときには、すでに作っていた服を一晩で、千雪の体型に合わせて直して見せた。千雪にウォーキングのイメージを伝える際は、難しい歩き方にも関わらずひょいひょいとやってのけた。生まれつき才能があるモデル業には情熱を傾けられなかったが、それでもひそかに努力は続けていた。自分が本気で目指すデザイナーという職業に出会って、その努力という才能がますます花開いたといえる。

 「モデル」や「背の高い女」ではなく、「一人の人間」として向き合った千雪と育人との出会いによって、人生を変えた心。育人に淡い恋心を抱きながら、フランスの地へ飛び立った彼女がデザイナーになり育人と肩を並べる日が来るよう、応援せずにはいられない。

■誉田優
フリーライター・記者。ドラえもんと共に育った生粋の漫画好き。
Twitter:@yu__honda

■書籍情報
『ランウェイで笑って(4)』
猪ノ谷言葉 著
価格: 本体450円+税
出版社:講談社
公式サイト

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