ドラマも話題『来世ではちゃんとします』が共感を呼ぶワケ 多様な性を肯定する作風を考察

『来世ちゃん』で感じる居心地の良さ

 著者のいつまちゃんはツイッターに「全員がマイノリティなら、誰も差別されないで生きやすいのになぁと思って描いてた。一見とんでもないマイノリティに見える彼らの姿も、実は大切な友人の裏の姿かもしれないし、未来の自分の苦しみかもしれないし、愛されたいという欲求の純度は世間一般で言う普通で綺麗な片想いと変わらないよね」「セフレが5人いる女とか、ヤッた女が病むヤリチンとか、処女厨とか...表層だけ見てクズだって切り捨てるのは簡単だけど、彼等がそうなったのはそれだけの理由があるし、変わった人物のようでありふれた人物でもある」と投稿している。

 『来世ではちゃんとします』とはすなわち、「今世はちゃんとしていない」ことの裏返しでもある。けれど、そんな“ちゃんとしていない”キャラクターたちに対し、作者は無理に成長させたり世間一般の価値観でジャッジしたりはしない。マイノリティ/マジョリティという区分でラベリングして評価することが、どれだけ傲慢で人を傷つけるのか身にしみてわかっているからだろう。

 だからこそ、多かれ少なかれ同じように“ちゃんとしてなさ”を抱える読者も、この作品を読むときは、無理に背筋を伸ばさずにすむ。腐れ縁の悪友といるときのような、ありのままでいられる居心地の良さを感じることができるのだ。

■六原ちず
編集者、ライター。出版社勤務を経て、フリーに。子どもの頃の夢はマンガ図書館の館長。@chizu_rokuhara

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