ベストセラー経済書『21世紀の資本』なぜ映画に? 原作のポイントから考察

ピケティ『21世紀の資本』映画化のなぜ

「経済学の書籍でありながら世界で約400万部売れた『ヤバい経済学』(スティーヴン・J. ダブナー著)を、モーガン・スパーロック監督など気鋭のドキュメンタリー監督たちがオムニバス形式で映画化(日本公開2011年)したことが火つけとなったのか、10年代はフィクション、ノンフィクションに関わらず「経済」も映像のトピックのひとつになりました。金融ジャーナリストの顔を持つノンフィクション作家、マイケル・ルイスの書籍を基にした映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(日本公開2016年)は、サブプライムローン危機の際に、株を売り抜け巨額の利益を出した人々を描いています。多くの人が2008年のリーマン・ショック以降、経済に対して危機感を持ち始めたため、映画の題材として成立しやすくなった側面はあるでしょう。さらに、是枝裕和監督の『万引き家族』(2018年公開)や、昨年末に公開されたケン・ローチの『家族を想うとき』、そして1月10日に日本公開されたばかりであるポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』など、「貧困と格差」を描いた映画も注目を浴びています。つまりそれだけ、今世界中で関心を持たれている題材ということです。ピケティの『21世紀の資本』は、ここ数年でどんどんと顕在化していく格差への予言的な書籍だったと言えると思います」

 では、映画化された『21世紀の資本』には、どんな見どころが期待できるのか。

「数式などを使わずに、ピケティの主張を裏付けるようなアーカイブ映像を使い、本人が解説していくということですから、書籍よりもかなりわかりやすくなっていることは間違いないのでは。その分、額面通り受け取っていいのかなという心配も少しありますね。ただ、本人が出演しているということは、単に自著の説明だけで終わることはなく、新しい見解も聞くことができるのではないでしょうか。ピケティは、昨年『資本とイデオロギー』という書籍をフランスで出版しました。まだ日本での発売は未定ですが、その中で『21世紀の資本』以降のヴィジョンを提示し、すでに本国では議論を呼んでいるようです。時代も進み、彼も様々な論争を戦い批判も受けてきたので、その結果として、どのようなことを映画で発言/発信するのか気になっています」

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