『鬼滅の刃』ノベライズの成功に見る、ジャンプ流メディアミックス 2019年末のベストセラーを考察

『鬼滅の刃』ノベライズ成功を考察

 また、j BOOKSで刊行された本編とは異なる舞台設定でのスピンオフ学園ものノベライズでは「中高一貫!!キメツ学園」以前に『銀魂』に登場する「3年Z組銀八先生」を描いたシリーズが累計300万部という成功事例がある。

 集英社が2019年8月に発表した第78期(H30.6.1~R1.5.31)決算では売上高1333億4100万円(前年比14.5%増)で、なかでもデジタル、版権、物販など「その他収入」が大幅に伸長した結果、10年前の水準に回復。利益面でも当期純利益が前年4倍弱となる98億7700万円を計上している(「新文化オンライン」内の集英社の決算に関するページよりhttps://www.shinbunka.co.jp/kessan/kessan-shueisha.htm)。

 つまりマンガを軸にアニメ、ゲーム、舞台、グッズなどといった二次展開によって収益をあげる体制を築いたことで、同社は狭義の出版市場の凋落を補っている。

 小説版はそうしたIP活用の最たる例であり、二次展開でもクオリティにこだわり、ツボを外さないことでファンのサイフを気持ちよく開かせるというジャンプ流のメディアミックスを象徴するものでもある。

 だってアニメの終盤で出てきた柱の連中が出てくるノベライズが10月に出るんですよ? 9月にアニメが終わってすぐに。それはアニメから入った人だって買っちゃうだろうし、原作では重要キャラもガンガン死んだり戦線から撤退していくなかでバックストーリーやら学園もので別の姿が描かれるわけだからそれは泣くって。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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