特殊清掃の仕事を描く『不浄を拭うひと』 簡略化された絵柄に漂う“死の多様性”

『不浄を拭うひと』簡略化された絵柄の意味

 もしも本作をリアルな絵柄の漫画家、たとえば『闇金ウシジマくん』(小学館)の真鍋昌平が描いていたら、辛すぎて読めなかっただろう。その意味で、沖田の記号的な絵に救われている部分はとても大きい。

 『透明なゆりかご』等の医療漫画もそうだが、描かれていることがどんなにショッキングでも読者が読み進めることができるのは、記号的な絵柄と淡々としたコマ割りだからだろう。この淡々とした描き方は本作の死生観ともつながっている。

 エピソードの多くは突然亡くなった人たちの話で、いわゆる孤独死と呼ばれるものだが、本作ではそれを必ずしも悲劇に限定して描いておらず、思わず笑ってしまう場面も少なくない。死の多様性が描かれていること、それ自体が救いに感じるのだ。

 最期に掲載媒体について。筆者は本作の連載を「ほんわらぴんきー」ではなく、電子コミック配信サービスの『めちゃコミック』(『めちゃコミ』)で読んでいる。『めちゃコミ』のWEB広告には独自のエグさがあって、今まで避けていたのだが、本作の広告を見た時、どうしても読みたくなって、つい会員登録してしまったのだ。

 『めちゃコミ』はポイントで一話ずつ購入する仕様で、一コマずつスクロールさせて読んでいく仕組みとなっている。この見せ方は、他の作品だとまどろっこしく感じるが、沖田の作品とは相性が良い。紙媒体だと流して読んでいた部分も、一コマ一コマ見ていくことですさまじい情報量が詰まっていたことに気付かされる。

 まとまった形で読むのなら単行本がオススメだが、『めちゃコミ』で読む本作にはまた違った味わいがある。第1話は無料なので、まずは『めちゃコミ』で読むことをオススメしたい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『不浄を拭うひと』1巻
沖田×華 著
価格:¥820(税込)
出版社:ぶんか社

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