超人気スープ作家が誕生するまでーー有賀薫インタビュー「“スープで料理が楽になる”を発信した」

スープ作家・有賀薫最新インタビュー

あったかいものを野菜たっぷりで食べられる。それで、じゅうぶん幸せ


――SNSを経て、いよいよスープ作家・有賀薫が誕生するわけですね?

有賀:SNSに出していて、一年経ったときに写真をまとめて『スープカレンダー展』という展覧会をやったんです。365日ぶんをカレンダーみたいにして、デザイナーさんにちょっとデザインしてもらって、ギャラリーの壁に貼って展示したんです。

――そこが大きなターニングポイントになったのですね?

有賀:やっぱりスープの持つ力が大きかったかもしれない。スープって、みんながホッとしたりなごんだり、「自分はこういうのを食べたよ」とか何か言いたくなる。来てくださった方たちの会話がすごく弾むのを見ていて、「スープって、なんかいいなあ」と思いました。その展覧会をきっかけに、雑誌で取材していただいたり、レシピのお仕事ももらったりするようになって、これはちょっと真剣にやろうかな?と思うようになりました。それで、2014年ぐらいから、本を出したいと思って、いろんな出版社に掛け合ってみたんです。これがまあなかなかうまくいかない(笑)。基本的にまったくの素人ですから。主婦で、飲食店で働いたことすらなかったんで。それでもずっと働きかけていて。

――ずっとご自分で売り込まれていたとは、素晴らしい行動力ですね。

有賀:それで1年半後ぐらいかな? 2016年に出たのが、『365日のスープ』。朝のスープという切り口で、私ができることを全部入れて作った最初の本です。その1冊目が出てからは、割とトントンと。本が出ると人にちゃんと見てもらえるので、そこから、ちょっとずつ広がっていきました。

――諦めずに続けたのがすごいです。「キツイなあ」って思ったことはありましたか?

有賀:ありました。たぶん若かったら別のとこに行っちゃってたかもしれないんですけど、その頃はもうスープを作り始めたときに受験期だった息子も、大学生になっていたし。子育てもだいぶ終盤。その後はオマケじゃないけど、できるところまでやればいいや、みたいな割り切りがありました。それに、面白かった。自分はずっと料理が好きで、何か料理関係のことがやりたいと思っていた。料理を専門的にやるということが、自分の夢というか、性格にも合っていたし、そっちに進みたいという気持ちが強かったんです。
あとは、信用してくださった方がいたことですね。イベントに場所を貸してくれたり、相談に乗ってくれたり、「スープ作家」という肩書きをつけてくださったり。みなさん表には出てないんですけど。私一人でやってる風に見えて、そういう方々が支えてくれたのが、続けてこられた理由かもしれないです。

――子どもが大学に入ると、一回燃え尽きちゃうお母さんもいると思うんですけど、有賀さんは抜け殻にならず、我が道を進まれたのがかっこいいいです。

有賀:息子の受験のためにスープづくりを始めて、受験は終わったのに、私のスープは終わらなかった、みたいな(笑)。

――スープが止まらない(笑)。

有賀:最初は家族のために作っていたものが、だんだん自分のものになっていきました。とにかく、毎日スープを作るのが楽しかった。

――楽しくないと続けられないですよね、何事も。

有賀:はい。私自身が飽きっぽいんで、これほど続いたものってないんじゃないかなって。いろいろなものが相乗効果でよくなっているというのがあるかもしれないです。あとSNSで反応が返ってくるから、それもやりがいになりました。フォロワーもずいぶん増えましたね。

――Twitterのプロフィールに「日本をスープの国にする野望」と書かれていて、すごく惹きつけられました。


有賀:あはは(笑)。ちょっとキャッチーなことを書こうかと。私は元々ライターで、コピーとかも書いていたのでそういうのを考えるのは得意です!

――ありがとうございました。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

有賀: 外で食べるようなごはんとか、シェフが作るような料理とかじゃなくて、あったかくて、栄養がとれて、簡単にできる。そういうものをすごく大事にしてほしいなって思っています。それで、じゅうぶん幸せ。

■有賀 薫 ありが・かおる
スープ作家。2011年から7年間、約2800日にわたって、朝のスープ作りを日々更新。スープの実験室「スープ・ラボ」をはじめ、イベントや各種媒体を通じ、おいしさに最短距離で届くシンプルなレシピや、日々楽に料理をする考え方などを発信している。著書に『365日のめざましスープ』(SBクリエイティブ)、『スープ・レッスン』(プレジデント社)、『おつかれさまスープ』(学研プラス)。『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(文響社)で、第5回料理レシピ本大賞入賞。最新刊は『朝10分でできる スープ弁当』(マガジンハウス)。

■書籍情報
『朝10分でできる スープ弁当』
有賀薫 著
価格:1,430円 (税込)
判型:A5判
発行・発売:マガジンハウス
公式サイト:https://magazineworld.jp/books/paper/3040/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「著者」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる