The Cureの記事一覧

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持久力と正当性——は、このイギリスで最も伝説的なオルタナティヴ・バンドの音楽とキャリアについて長年用いられてきた言葉だ。
すでに約25年(!)の活動歴を誇るザ・キュアーだが、スタート当初は一部のゴス・クラウドに支えられるカルトな存在だった。だが、やがて国民的ポップスターとなり、しまいにはスタジアム・ツアーの会場を満員にするまでに至った。そしてこの長い活動の間、彼らがサウンド・クオリティを落とすことは一度たりともなかったのである。気難しいことで有名なフロントマン、ロバート・スミスは、独自のロマンティシズムを、時代が変わろうとも揶揄されようとも頑なに守り続けたのだ。その憂いを帯びたメランコリズムは、初期のアルバム『ポルノグラフィー』『フェイス』において激しく爆発している。
また84年にリリースされた『ザ・トップ』を機に、オペラティックで甲高い歌唱法を取り入れ、楽曲に極端な抑揚を加えるようになった。中でもヒット曲「キャタピラー」は、鳥肌モノの奇妙なエネルギーに満ち溢れている。以降、80年代中盤はエナジーみなぎるポップ技術に磨きをかけていったが、初期のファンは疎遠になりつつあったのも確か。——が、89年に発表された『ディスインテグレーション』では、容赦なきストレンジ・ギターとダーク+耽美なメロディで往年のキュアー節を再現。この流動的なイメージが際立つ作品でバンドは頂点を極め、90年代の活動の基盤をつくった。
音楽と同様に我が強く、怠惰な態度を見せるロバート・スミスだが、2000年代に突入した現在も毒々しいまでにポップスターの象徴で在り続けている。