Sealの記事・ニュース・画像一覧

自分と自分を取り囲むすべての魂の救済を求めるような、深く真摯なサウンド・ユニヴァースを描き出すシンガー、シール。ファルセット／テナー／スキャットを楽曲によって巧みに使い分け、また、情念がほとばしるようなヴォーカリゼーションを繰り出す彼は、今や“真のソウル・シンガー”としてのポジションを確立している。
そんなシールは、アダムスキーの曲「キラー」に参加したことから注目を浴び、鬼才トレヴァー・ホーン率いる＜ZTT＞レーベルから90年にデビューした。当時こそハウス／テクノ色の強いフロア・ライクなナンバー群を打ち出していた彼だが、２ndアルバム『シールII』（94年）以降、アンビエント・ソウルともいえる、抱擁力のあるドラマティックな世界観を示していく。また、ジェフ・ベック、ジョニ・ミッチェル、ディー・インフルエンス、屋敷豪太、アン・ダドリー（ex.アート・オブ・ノイズ）……といったジャンルを超えたコラボレーションが満喫できるのも、彼の大きな特色のひとつだ。
そもそもシールは、ブラジル人の父親とナイジェリア人の母親との間に、63年にロンドンで生まれた（顔に刻まれた大きなキズは母方の種族に伝わる酋長の子孫を証明するもの——であることはあまりに有名か）。生まれつき“異文化”の内包を宿命づけられていた彼が、ジャンルや人種、果ては人々の固定観念すらもを超越すべく作品作りに立ち向かったのは、ごくごく当たり前のことだったのかもしれない。——世界的に成功を収めた現在もなお、愛と幸福を願う祈りのごとき歌とその根底に流れるポリシーは、力強く、不変的なものである。