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アイルランドの恐るべき10代、パワー・オブ・ドリームス。彼らがUKポリドールから1stアルバム『Immigrants,Emigrants And Me』(90年)をリリースしたとき、その平均年齢は18歳弱。さらに彼らが結成されたのはその3年前、つまり15歳のときだった。まったく恐れ入った早熟な才能だったわけだが、今となってみれば、音楽に興味をもち、ロックにイカレて、バンドごっこに夢中になる、言ってみれば誰でも通過する思春期のハシカのような熱病のまま、つまり純粋無垢な少年の心のまま、下積みも、ロクな人生経験もないままプロ・デビューしてしまったという幸運——ある意味では不幸——ゆえの脆く儚い、しかしだからこそのブライトな光が感じられる。それはおそらく天与の才などではなく、その世代の若者なら誰でも持っているはずの、ある種の輝きだったのだ。
88年初頭、クレイグ(vo&g)とキース(dr)のウォーカー兄弟、マイケル・レノックスの3人で結成。地元のインディからシングル・デビューするとアイルランドやイギリスのプレスから絶賛を浴び、翌年11月にUKポリドールと契約、3枚のシングルを発表したのち『Immigrants,Emigrants And Me』を発表。ソングライティングの才能と歯切れのいいオーソドックスなギター・ロックで日本でも大きな評判となる。92年には2nd『2 Hell With Common Sense』を発表するが、マンチェ・ブームとダンス・ミュージック全盛の当時のイギリスでは、彼らのようなまっとうなギター・ロック・バンドの居場所はなく、期待したほどのセールスを上げられないままメジャーからドロップ、インディから3rd『Become Yourself』(94年)をリリース。リズム・マシーンやラップなども取り入れた「今風」のサウンドを披露したものの、それ以降の音沙汰はない。
通常であればオリジナリティを確立し、内実を鍛え、ライヴを積み重ねて基礎を固める時期に、それらをすべてすっとばしいきなりデビューしてしまった彼らは、もしかしたらバンドとしての健全な成長を早すぎたデビューによって阻害されてしまったのかもしれない。しかしまっとうな「成長」で「オトナ」になってしまった、その他大勢の自称ロック・バンドたちが失ってしまった「輝き」「光」を、確かに彼らは放っていた。それがたとえ一時のものだったとしても。 (小野島 大)

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