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今や伝説のフォーク・シンガーとして語られている、ニック・ドレイク。天性の才能とカリスマ性を併せもった孤高のアーティストだ。そんな彼を象徴する作品といえば、『ピンクムーン』(72年)以外に考えられないだろう。たった二晩で録り上げられた、なにひとつ装飾のないアルバム。彼の心情を焼き映したようなアコースティック・ギター・サウンド、喪失感に満ちた歌声、アクセントにピアノ少々……美しくも儚げに響くピュアな音、それだけである。
中の上と呼べる裕福な階級に生まれ育ち、思うがままミュージシャンへの道を歩んだドレイク。なのに、彼の周りにはやり場のない悲愴感がたちこめていた。それは、アーティスティックな作品に理解を示さない大衆への葛藤が生み出したものであった。——正当な評価を受けることができず、精神的に追いこまれたドレイクは、自ら命を絶ってしまう。それは、遺作の中で最後に奏でた「夜がひとたび明ければ美しいかぎり」というフレーズを体現するがごとき、“希望を見出すための死”であったような気がしてならない。

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