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まだ<ヴァージン>レコードがアンダーグランド音楽の牙城だと見なされていた70年代初頭、コインは<ヴァージン>と契約する。同じレーベルにはアヴァンギャルドなジャズロックでその名を馳せていたヘンリー・カウやロバート・ワイアットがいたが、コインの音楽はそれとはちょっと違っていた。彼独特の雄叫びのようなヴォーカル・スタイル、狂気や剥奪や忘れられた人たちを主題とした歌詞の世界を垣間見たいなら71年の『ケース・ヒストリー』か73年の『マジョリティ・レイザーブレード』が最適だろう。フォーク・ミュージックを基礎に据えたこれら2枚のアルバムは精神的な不安定を主題にするコインのこれまでの仕事と密接に絡み合っており、その荒削りで、カントリー・ブルース的なヴォーカルの魅力を余すところなく表現している。70年代を通じて彼の仕事はより洗練の度を増してくる。そして後に、ポリスのギタリストになるアンディ・サマーズがツアーのメンバーに名をつらねるなど、当時勃興しつつあったパンク・ロックにも大きな影響を与え、79年には元スラップ・ハッピーのヴォーカルだったダグマー・クラウゼと最良のパートナーシップを見いだすことになる。が、その後も、コインの作品は正当な評価を受けることないまま80年代、90年代を通じてその厚みを増していく。シド・バレットやスキップ・スペンスといった同種の一風変わったミュージシャンに賞賛の言葉が投げかけられる中、ケヴィン・コインも再評価されてしかるべき存在だろう。

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