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荒木一郎——この分裂気味の才人をフォーク・シンガーという一言で済ませてしまうのは、あまりにも無理がある。もともとは正統派シンガー・ソングライターの先駆けとして、66年にアルバム『ある若者の歌』でデビューを果たし、同年「空に星があるように」を大ヒットさせた。だが、以降はアルバムごとにカメレオンの如く音楽性を変えている。ロック、カントリー、フォーク、サイケ、ムード歌謡を貪欲に取り込み、その中から抽出した濃厚なエキスによる「荒木ワールド」を完成させたのだ。さらに、フランジャーを多様した独特のアレンジが楽曲の質感をよりディープなものにしている。また、初期は詞においてかなりロマンティックな側面を打ち出していたが、70年代中期になると「大人の男ならでは」の、ダンディズムとエロスを妖しげに表現した。そして、「あしたのジョー2」やドラマの主題歌を手がけるなど、ポップスのメロディ・メイカーとしての才能も特筆すべきものがあるといえるだろう。しかし、80年代初頭に芸能界のシステムに納得がいかず、潔く引退をしてしまった。

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