SHERBETS、25周年ツアーで体感したい“透徹した美しい音像” 不動の4人が繰り広げてきたライブの変遷を振り返る

SHERBETS、ライブの変遷を振り返る

 結成25周年を記念したSHERBETSの全国ツアー『SHERBETS 25th ANNIVERSARY TOUR「Midnight Chocolate」』が開催中だ。ニューアルバムのタイトルを掲げた今回のツアーでは、バンドの歩みと現在形の両方を体感することができ、すでに最高のライブが展開されている。ここでは、折り返し地点に差しかかっている本ツアーへの期待値をさらに高めるべく、SHERBETSが今までどんなライブを繰り広げてきたのかを綴っていこうと思う。

 前身であるアコースティックユニット、SHERBET(ギター&ボーカルの浅井健一、キーボードの福士久美子らが在籍)が発展する形で結成された4人組バンドのSHERBETSは、当初から現在まで不動の布陣である。そのライブの第一歩はちょっと変則的で、1999年、アルバム『SIBERIA』の録音で訪れたサンフランシスコのライブハウスで行われている。

 当時のベンジーこと浅井は、破格のバンド BLANKEY JET CITYによってロックシーンを飛び越えるほどの存在だっただけに、SHERBETSについては彼のソロ活動の場として見られることが多かった。その上、最初のシングル曲になった「HIGH SCHOOL」はパンキッシュかつラウドなロックンロールで、世の中的には「ベンジーがもうひとつロックバンドを作ったのか」という認識が強かったはずだ。なお同曲は、ライブの際に福士が唯一ギターを弾く曲として今も認知されている。

 しかし実際には、ファルセットの箇所もあるメロウナンバー「はくせいのミンク」、サイケデリックでスローな「シベリア」のように、『SIBERIA』ではベンジーの歌の文学性や少年性がセンシティブに表出する箇所が際立っていた。また、ハードな展開を持つ「ジョーンジェットの犬」のような曲でも、福士のキーボードが果たす役割は絶大。ソロでも活動する彼女は、音の空間を映像的な音色で彩ることができる才人である。

 こうした側面はSHERBETSのライブにおいても同様だった。数年前まで身を引き裂かんばかりのシャウトを聴かせていたベンジーが、このバンドではソフトな歌い方をしている姿からは、彼が新たな領域に踏み出そうとしている事実が強く感じられたのである。

 BLANKEYが解散した2000年の夏には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に出演し、暮れにはアルバム『AURORA』をリリースしたSHERBETS。転がるようなビートが続く「グレープジュース」は、ネオアコ系のバンドにも在籍したドラマー・外村公敏の持ち味が出た曲だと言えるだろう。この時期はライブを重ねるごとに演奏の一体感が高まり、メンバー同士の呼吸がどんどん合うようになっていった覚えがある。また、アルバムタイトルからもわかるように、当時のSHERBETSの作品には寒い世界をイメージしたものが多く、そこから発案されたのか、2001年の1月には新宿Flagsでのルーフトップギグを開催。夜の冬空の下の寒さとともに、非常に思い出深いライブだ。

 ここから2001年のSHERBETSは『FUJI ROCK FESTIVAL』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』への初出演を挟みながら、シングル3枚の連続リリース、さらにまっさらの新曲で揃えたアルバム『VIETNAM 1964』へと一気に加速し、バンドとしての絶頂期を迎える。そのシングル群の第2弾「カミソリソング」は仲田憲市(Ba)のスペイシーなベースラインが延々と続くアッパーな曲で、この頃のライブのクライマックスに向かう起爆装置として機能していた。当時、The Smashing Pumpkinsに傾倒していた仲田は、かねてからニューウェイヴやポストパンクに通じ、その上にサイケデリックなニュアンスも匂わせる演奏を聴かせるプレイヤーで、バンドにおける存在は大きい。そして『VIETNAM 1964』のツアーでのSHERBETSは、センシティブなバラードも爆音のロックンロールも余すことなくパフォーマンスし、バンドとしてひとつの完成形を見たかのような境地に達した。

 その反動なのか、2002年初頭のツアーを終えてからは活動が冬眠状態に入り、ベンジーはスリーピースバンドのJUDEを始動させるに至るのだが、SHERBETSはこうした合間にも水面下での制作を続けていた。その成果は2005年にアルバム『Natural』となって結実。イントロから仲田のベース音が無音の空間に響く「フクロウ」は、まさにSHERBETS以外には表現しえない世界だ。

CMC会員限定配信予告編(フクロウ)

 また『Natural』には、ベンジーのナイーブな部分が仲田、外村、福士の感性と最上の形で交わる名曲「わらのバッグ」もある。この年の、夜の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で披露された同曲が感動を与えてくれたことをよく覚えている。

 2007年のアルバム『MIRACLE』の中で、とりわけライブの場でなじみ深いのは外村のアクセントのあるドラミングも特徴的な「Rainbow Surfer」だろう。メジャーコードの展開がポジティビティを強く感じさせる曲である。さらに2008年のミニアルバム『GOD』では「小さな花」、同じ年のフルアルバム『MAD DISCO』では「KODOU」といった曲たちが、ライブの空間に灯りを、希望をもたらしてくれた。それぞれに大切な作品たちだ。

SHERBETS - 小さな花(FUJI ROCK 22)

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