SHERBETS 浅井健一&福士久美子、自然体のまま独創的であり続けた25年間 出会いから“解散撤回”の真相まで振り返る

浅井健一&福士久美子、SHERBETS 25年史

 今年、久しぶりに本格稼働の季節を迎えているSHERBETS。10月26日にリリースされたニューシングルの表題曲「UK」は、その透明でピュアな世界がさらに色濃く表現された1曲だ。孤高のまま独自の道を歩き続け、来年で結成から25周年。『24th→25th ANNIVERSARY TOUR “そして未来へ”』と題したツアーも開催中だが、アニバーサリーということもあり、今回の取材ではシングル『UK』とともに、バンドの歩みを振り返っていく。

 最初期は単数表記のアコースティックユニット SHERBETとして、BLANKEY JET CITYのベンジーこと浅井健一(Vo/Gt)によるサイドプロジェクト的なポジションとして認識されていた。しかしメンバーが変わり、SHERBETSに転じて以降は、ベンジーが自身の最も純粋かつ深遠な部分を表現しながら、それを福士久美子(Key/Cho)をはじめとした個性豊かなメンバーたちがサウンドに昇華するバンドとして認知されるようになり、今に至るまで多くのファンに愛され続ける存在となった。

 というわけで、インタビューは過去から現在、さらに未来までを網羅する対話となったのだが、既報の通り負傷したことを理由に仲田憲市(Ba)が開催中のツアーに参加できず、SHERBETSは現在サポートメンバーを立てた状態でライブに臨んでいる。今回の取材はそのツアーに突入する前、まさに仲田の不参加が発表される直前に行ったもので(筆者も、仲田のツアーへの不参加はこの取材中に知らされた)、彼に対するベンジーの言葉も愛憎入り混じったものになっているのだが、それもSHERBETSらしい正直さだと思って、読んでもらえればと思う。

 なお、取材翌週の10月16日には渋谷Spotify O-EASTからツアーが幕を開けた。サポートのベーシストに迎えられた宇野剛史は過去にART-SCHOOLにも在籍した猛者で、SHERBETSの多彩な楽曲の低音を見事に支えていた。彼自身、中学生の時にBLANKEY JET CITYのコピーをやっていたらしく、今回のオファーも前向きに受けたという。ライブは今年4月にリリースされたアルバム『Same』やシングル『UK』の楽曲を交えながら、バンドのキャリアを総括するような圧巻のセットリストとなっていた。純粋で、誠実で、いつも自然体なSHERBETSの未来に幸福があることを、そして仲田憲市の全快を心から祈りながら、このインタビューをお届けしたい。(青木優)

シングル曲になると思っていなかった「UK」

ーー「UK」は心に深く染み込んでくる曲だと思います。浅井さんとしてはいかがでしょうか?

浅井健一(以下、浅井):いや、まさかこれがシングル(表題曲)になると思ってなくてさ。俺たちは(カップリング曲の)「Smoothie Glider」のつもりで、ずっと作ってたんだけど。

ーーそうなんですか。

浅井:うん。「UK」は「録っとこうか」くらいの感じで完成させてて。全部で4曲ぐらい候補があって、それを周りの信頼の置ける人たちに聴いてもらったら、「UK」がいいという意見が多数出て、「じゃあ『UK』にする」という話になったの。もちろん「UK」も大好きだしキャッチーだなと思うけど……そういう流れなんだよね。

福士久美子(以下、福士):私も当然「Smoothie Glider」かなと思ってたから、決まった時はちょっとひっくり返りそうになって……ええ? って(笑)。

浅井:福士さんの友達のひと言が大きかったかな。「(演奏時間が)短いから、こっちのほうがいい」って。

福士:あと「今までになかった感じもする」って言ってた。それで「こっちのほうがいいんじゃない?」って。

ーーそれに、今の音楽シーンで比較できるサウンドがあまりない気がします。

浅井:そうかもね。(世の中は)デジタルサウンドだもんね、みんな。「UK」はちょっと昭和の感じがするでしょ? 昭和歌謡というか、昔のヒットソングの匂いを感じてるんだよね。キーボードの「パ~ラッ」という部分とかが好きだな。

SHERBETS「UK」Music Video

ーーSHERBETSって現在のメインストリームを意識したり、そこに寄せようとしたりはしないバンドで。今回もそういう音と曲になっていると思うんですけど、この認識は間違ってないですよね?

浅井:うん、全然間違ってないよ。そんな気、毛頭ないもん(笑)。でもナンバー1になろうとは常に思っとるよ。(主流に)寄せるんじゃなくて、「こっちのほうがすごいよ」って。それでナンバー1になりたいっていうかさ。「こういう感じが売れてるから、その真似をしよう」ということはないよ。カッコ悪いから。

福士:「すごい音楽を作る」というのがまず一番大切ですね。アレンジは服装みたいなところもあるから、今っぽいものでほんの少し飾る的なことはあるけど、自分はその曲に一番似合う、カッコいい服をいつも着る気持ちでいたりもします。あとはベンジーが日頃何かを感じながら生きている中で書いた詞によって、楽曲の深みや面白さが最大限引き出されたらいいなと思っていて。

ーー「UK」は歌詞もいいですよね。イメージの元は何かあったんですか?

浅井:それは、ない。

ーー〈ライ麦畑〉が出てくるから、どうしてもJ.D.サリンジャーの小説(『ライ麦畑でつかまえて』)を思い出すんですが。

浅井:ああ、そうだね。でも〈ライ麦畑〉は本当のライ麦畑を想像してるけど。別に大それたことを言おうとは思ってないよ。

ーータイトルの「UK」というのは?

浅井:書いてたら、〈サンデー UK〉って出てきて……イギリスのティーンが家でソファーに寝そべりながらアイスクリームを食べてる情景が浮かんできてさ。その子が思い浮かべてる事柄について歌ったんだけど、MVの監督は「ヤバいですね、この歌詞!」とか言うの。ドラッグの曲に聴こえるんだって(笑)。〈飛んでたい〉っていうところとかさ。そんなつもり全くないんだけど、面白いなって。

ーーここまでクリエイティブな曲が出てきてるのは、バンドがいい状態にあるからじゃないかなと思いました。

浅井:俺たちからしたら「Smoothie Glider」がシングル曲のつもりで作ってたから、「そうだね」って言いにくいんだけど(笑)。褒めてもらうのは嬉しいよ。まあ「UK」は歌ってて楽しいな。

ーー「Marble」についてはどうでしょうか。

浅井:この曲の題材はサーファーなんだけど、俺はこういうのが好きなんだわ……もう「Marble」をメインにしようか(笑)。「仲間で仲良く、自然の中で気楽に生きていこうよ」っていう世界観が好きなんだよね。あと伊豆の多々戸浜とかの、メロウな波の海は本当にいいから。コストコに1万2千円ぐらいで売ってるサーフボードがあるから、それを買ってサーフィンにチャレンジするのもいいよ。心が洗われる。でも、サーファーは少ない方が嬉しいのでたまにやるぐらいがいいと思う。

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