ゆず、“どんな困難も越えていける”という確信と自信 4年ぶり全国アリーナツアー追加公演で届けた極上のエンターテインメント

ゆずアリーナツアー追加公演SSAレポ

 3月末からオリジナルアルバム『PEOPLE』を携えた全国アリーナツアー『YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLE -ALWAYS with you-』(10カ所24公演)を開催。2018年の『YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL』以来、約4年ぶりの全国アリーナツアーを完走したゆずは、間髪入れず、追加公演『YUZU ARENA TOUR 2022 SEES -ALWAYS with you-』(3カ所6公演)をスタートさせた。25周年のキャリアを彩る名曲と最新の楽曲を含んだセットリスト。ファン歴に関わらず、誰もが楽しく盛り上がれる演出。そして、“今、この思いを伝えたい”という真摯なメッセージ性。6月に発表されたニューアルバム『SEES』の楽曲も盛り込んだこのツアーで彼らは、会場に足を運んだすべての人を大きな感動で包み込む、一分の隙もないステージを繰り広げた。

 ステージには、NY在住の現代美術家・松山智一氏が手掛けた全長12mの女神像「Mother Other(マザー・アザー)」が。“花鳥風月”を想起させるオープニング映像、そして、アルバム『SEES』の1曲目に収められた「君を想う」からライブはスタートした。高揚感に溢れた4つ打ちビート、きらびやかなシンセサウンドが広がり、観客は手拍子で応える。さらに〈また走り出した 僕らのストーリー〉というラインが疾走する「ストーリー」(2008年シングル)では、北川悠仁が「いくぞ! さいたま!」と叫び、会場全体に一体感が生まれた。ゆずの軸である、北川と岩沢厚治のハーモニーも気持ちいい。

 「追加公演、かなり内容を変えて、まるで別のツアーのように行っています!」(北川)という今回の公演の中心はアルバム『SEES』の楽曲。朗らかな旋律とともに“叶えられないからこそ、夢を見続けよう”とメッセージする「ゆめまぼろし」、アコギの弾き語りで地元への愛着を歌った「イセザキ」、そして、「AOZORA(YZ ver.)」(原曲は北川が書き下ろした「FM802×ナカバヤシ ACCESS! キャンペーン」キャンペーンソング「AOZORA」)では、未来に向けた前向きな思いを込めた歌を放つ。ハンドマイクでステージの端から端まで移動し、観客と積極的にコミュニケーションを取る北川の笑顔、「長め、大きめの拍手、ありがとうございます」という言葉も印象的だった。

 さらに「ゆずで唯一、“MDダウンロード”で出した曲です! 知ってる?」(北川)と紹介された「アゲイン」(2002年)、観客がタンバリンや手拍子で参加した「タッタ」(2017年シングル)を披露。「あの手この手」(アルバム『PEOPLE』)では、北川が“ハンドくん”(大きな“手”の形をしたかぶりもの)としてアリーナに登場。フロートに乗って移動しながら曲中でじゃんけん大会を行い(勝ち残った人はキャップをプレゼントされていた)、まるでアミューズメントパークのような雰囲気に。その直後、荘厳なイントロが鳴り響き、「栄光の架橋」へ。言わずとしれた代表曲だが、壮大なスケール感をたたえたサウンド、強い感情を込めた二人のボーカルによって、まったく新しい感動へと結びつける。楽曲の終盤で奏でられた〈どんな困難も 越えてゆくんだ こんなもんじゃない〉というフレーズも心に残った。この楽曲に込められた普遍的なパワーは、コロナ禍を経て、さらに大きな意味を持つに至ったーーそのことを強く実感させられる、圧巻のパフォーマンスだったと思う。

 換気タイムを挟み、「奇々怪界-KIKIKAIKAI-」(アルバム『PEOPLE』)から後半がスタート。フォークロア、エレクトロ、ヒップホップなどが絡み合うプログレッシブな楽曲は、ゆずの奔放な遊び心を象徴するナンバー。パーカッションを叩きながら歌う北川、ドラマティックかつストレンジな旋律を描き出す岩沢もめちゃくちゃ楽しそうだ。

 UKロック的なアプローチの「LAND」(2013年アルバム『LAND』)、「夢の地図」(2004年シングル)では、“どんなことが起きても、また前へ進んでいこう”という強い意志を改めて提示した。さらに「NATSUMONOGATARI」(アルバム『PEOPLE』)、「桜木町」(2004年シングル)をメドレーで披露するなど、25周年のアニバーサリーにふさわしく、様々な時代の楽曲が演奏された。幅広いジャンルの楽曲、色彩豊かなサウンドを生み出すバンドメンバー(河村吉宏/Dr、須藤優/Ba、松本ジュン/Key、真壁陽平/Gt、結城貴弘/Cello、 磯貝サイモン/Key&バンドマスター)の演奏も素晴らしい。

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