神はサイコロを振らない、全国ツアーを完走して芽生えたファンに対する思い 「みんなで一緒に歌える未来がきたら泣いてしまう」

神はサイコロを振らないインタビュー

 ラッパー Rin音とのコラボによる“愛と平和”をテーマにした楽曲「六畳の電波塔」をリリースしたばかりの4人組ロックバンド、神はサイコロを振らないが、早くも新曲「カラー・リリィの恋文」をリリースする。この曲は、サッカーアニメ『アオアシ』(NHK Eテレ)の第2クールエンディングテーマとして書き下ろされたもの。物語のヒロインである一条花に焦点を当てつつ、「ファンへのラブレターのつもりで書いた」という柳田周作(Vo)による歌詞と、聴くたびに胸に染み入るような爽やかで切ないメロディが印象的だ。全国ツアー『Live Tour 2022 「事象の地平線」』を無事に完走したばかりの4人に、新曲の制作エピソードや来年開催されるZeppツアーへの意気込みなど聞いた。(黒田隆憲)

ファンからの声に助けられたツアーだった

柳田周作
柳田周作

──7月17日の東京・LINE CUBE SHIBUYAでの公演で、『Live Tour 2022 「事象の地平線」』は千秋楽を迎えました。やり切った今の率直な気持ちから教えてもらえますか?

柳田周作(以下、柳田):まずは13都市14公演、全て無事に開催できたことが嬉しいです。僕らメジャーに移籍してから細かく地方をまわれたのは今回が初めてなんです。コロナ禍ということもあり、これまでずっと東名阪と福岡、行けて仙台くらいまでだったのですが、今回はメンバーそれぞれの出身地でも凱旋ライブができたんです。特に僕の出身地である宮崎県と、桐木(岳貢)の出身地である島根県に行けたのは結成以来初めてで。

吉田喜一(以下、吉田):「原点回帰」というか、自分たちが忘れていたものが蘇ってきた感覚もありましたね。LINE CUBE SHIBUYAのような1000人を超えるところでもやったかと思えば、宮崎に関しては100人キャパくらい、ステージも低くてお客さんが目の前にいる感じ。自分たちがアマチュア時代に鍛えられた「原点」ともいえるライブハウスで、今このタイミングで演奏ができたのはとてもいい経験でした。

黒川亮介(以下、黒川):ツアーは本当に、あっという間でしたね。僕らはこれからフェスへの出演が増えていくわけですけど、その前に自分たちのお客さんの前で、たくさんライブができたのはとても意義があったなと。ライブバンドとしての、自分自身の感覚がどんどん戻ってくる実感もあったし、今年後半に向けて今は「準備万端」という感じです。

桐木:ツアーはかなり長丁場だったし、正直モチベーションをちゃんと保ったまま続けていけるのかが最初はちょっと不安だったんですけど、今亮介が言ったように始まればあっという間でしたね。それぞれの公演で見えてきた課題点も、最後にはちゃんと解決できたし成長もできたんじゃないかと思っています。

Rin音
Rin音

──ファイナル公演ではRin音さんを迎えて「六畳の電波塔」を披露しました。

柳田:この曲のラップ部分は、ファイナル公演以外の場所ではよぴ(吉田)がやってて。LINE CUBE SHIBUYAでは満を持してRin音くんが登場してくれたんですけど、「やっぱりラップってかっこいいな」と隣で聴きながら普通に感動していました。Rin音くんの声って、優しく包み込んでくれるようなところがあって。なのにマイクを通すとめっちゃ通るんですよ。あれってなんでなんだろう? とすごく不思議だったんですけど、それこそがRin音くんの魅力であり特徴なんだなと改めて思いましたね。「六畳の電波塔」という、愛と平和を訴えるメッセージソングにもピッタリでしたし。

──ファイナル公演で柳田さんが、「このツアーを通して伝えたかったことはただ一つ。どうか生きてください。生きていればまた会うことができる。僕らのメッセージはそれだけです」と叫んでいたのも印象的でした。この言葉は、どのような思いから出てきたものだったのでしょうか。

柳田:毎週土日にライブをして、平日は家に戻って過ごす……という生活サイクルをツアー中は繰り返していたのですが、そうすると気持ちの浮き沈みがものすごく激しくなっていくんです。ライブをやってないと自分は生きている意味がないと思ってしまうくらい落ち込むこともありましたし、まずはその生活サイクルに慣れるまでが大変でした。

──そうだったんですね。

柳田:そんななか、ファンから送られてきたメッセージにものすごく助けられました。本来なら僕が音楽でみんなの力になるべきなのに、こうやって自分はみんなに「生かされている」のだなと心から思えた。だからこそ、みんなにも「生きていてほしい」と強く言いたかったんですよね。ファンからもらったメッセージを読むと、僕が思っていた以上に生きることへの意味を失ってしまった人、希望を持てていない人が多いんですよ。家庭や仕事の環境で悩んでいたり、コロナ禍でより強くそれを感じてしまう人も多かったりして。MCで訴えていたのは、そういう人たちに対してのメッセージでした。

黒川:ファンに対しての思いは、僕もツアーをやりながら変わっていったところがありますね。それまでの自分は「自分自身のために頑張っているんだ」という意識が強かったんですけど、それだけじゃ頑張れないというか。ファンからもらうメッセージを読んでいると、そういう人たちの思いも背負っているという気持ちになれたし、「自分のためだけに頑張っているわけじゃないんだ」という思いが原動力にもなった。そこは、ツアーを経て大きく変化した部分なのかなと思っています。

桐木:お客さんがいるからこそ自分たちの活動が成り立っているということは、もちろん今までも頭で分かってはいたんですよね。でも実際にツアーを回ってお客さんの顔を直接見ると、「ちゃんと思いを返したい」という気持ちが僕自身も大きくなっていきましたね。

桐木岳貢
桐木岳貢

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