藤澤ノリマサは未だ伸びやかな成長期にあるーー松井五郎とのゴールデンコンビによる「愛するかたち」で表現したもの

藤澤ノリマサ「愛するかたち」で表現したもの

 いよいよ来年に迫るデビュー15周年を前に、藤澤ノリマサの活動がさらに活発になってきた。2022年の前半は、『全国ランチショー&ディナーショー~会いに行くよ~』と題して日本中を駆け巡り、コロナ禍でなかなか会えなかったファンとの絆を再び強く結び直した。6月には初めて東京・浜離宮朝日ホールでの単独コンサートを成功させ、7月には八ヶ岳高原音楽堂でのサマーコンサートや、その他イベントにも積極的に出演して新たなリスナーとの出会いも得た。そして何より、4月にオリジナル楽曲「Return To Life」を、7月に「愛するかたち」を配信リリースして、年々熟成を重ねるボーカリストとしての魅力をしっかりと伝えてくれた。デビュー15年といえばベテランと呼ばれておかしくないキャリアだが、藤澤ノリマサは未だ伸びやかな成長期にある。その若々しい躍動が、年代を問わず多くのファンを惹きつけ続ける。

『La Luce-ラ・ルーチェ-』がもたらしたもの

 2022年の好調のきっかけになったのは、間違いなく昨年5月にリリースされたアルバム『La Luce-ラ・ルーチェ-』だ。現代最高の作詞家のひとり、松井五郎の全面協力を得て、すべての作曲を藤澤ノリマサ自身が手掛けた意欲作。彼の実体験をもとに書かれた「手紙」「帰り道」「Song Is My Life」などは自伝的なぬくもりにあふれ、同時にコロナ禍で見直された人間同士の愛と信頼とを誠実に描き出す。メロディは70年代や80年代の洋楽スタンダードの懐かしさを思わせ、様々な年代の音楽ファンの心にすんなりと沁み入る。トレードマークのベルカント唱法はここぞという見せ場のみに使われ、より普段着に近いポップスシンガーとしての巧さと親しみやすさが前面に出ている。『La Luce-ラ・ルーチェ-』を完成させることで、藤澤ノリマサはポップオペラだけではない力強いコミュニケーションツールを手に入れた。

『La Luce-ラ・ルーチェ-』

 その最新の成果が、作詞・松井五郎と作曲・藤澤ノリマサのゴールデンコンビによる新曲「Return To Life」と「愛するかたち」の2曲の中にある。「Return To Life」は現代的な打ち込みとバンドサウンドの融合で、溌剌としたリズムと高揚感あるメロディが心躍る希望を運ぶ。楽曲に寄せたコメントで、藤澤ノリマサは「こんな大変な状況ですが、今を生きる皆さんの心や気持ちを少しでもこの楽曲はじめ、音楽で心を照らす事ができたら」と綴り、松井五郎は「歌でできる事などたかが知れてるかもしれない。それでも、次の一歩を踏みだす力になるような歌を作れないものか」と、制作の動機を語った。「Return To Life」には、「再生」という意味がある。コロナ禍で傷ついたたくさんの希望にもう一度チャンスを与え、再生させる歌。6月の東京・浜離宮朝日ホール公演でも、観客の大きな手拍子がこの歌にさらに力を与えた。まさに2022年に生まれるべくして生まれた歌だ。

「Return To Life」

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