神はサイコロを振らないが表現する未来への祈り Rin音も駆けつけた『事象の地平線』ファイナル公演

神サイ、LINE CUBE SHIBUYAレポ

 福岡発4人組ロックバンド、神はサイコロを振らない(以下、神サイ)によるライブツアー『事象の地平線』。そのファイナル公演が7月17日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにて行われた。

 本ツアーは、今年3月にリリースされた神サイの記念すべき1stアルバム『事象の地平線』を携え全国13都市14公演で開催されたもの。1stアルバムにして2枚組という破格のボリュームが話題となった本作だが、この日はアルバムからの楽曲を軸としつつも懐かしい過去曲を積極的に詰め込んだセットリストで、デビュー時から彼らを追いかけてきたコアファンはもちろん、最近ファンになった人まで一緒に楽しめる内容となった。

 定刻になると青い照明に照らされながら、吉田喜一(Gt)、桐木岳貢(Ba)、黒川亮介(Dr)がステージに姿を現す。肩慣らしを兼ねて3人がおもむろにセッションを始めると、最後に柳田周作(Vo)が登場。まずはアニメ『ワールドトリガー』3rdシーズンの主題歌にも起用された「タイムファクター」でこの日のライブはスタートした。続く「1on1」は、イントロからオーディエンスもハンドクラップで応戦。オープニングからぐんぐんと上がっていくボルテージに柳田も興奮したのか、「忘れられない夜にしようぜ!」と叫んでいたのが印象的だった。

 「この景色、凄いです……サクラじゃないですよね(笑)? 僕らのファンで間違いないですよね」と柳田が念を押すように言うと、フロアからは笑い声が上がり、張り詰めた空気は一気にリラックスムードに。「一番後ろの席までしっかり見えてるんで、今日は一瞬たりとも目を離さんといてください!」と方言を交えながらファンに語りかけた。

吉田喜一
吉田喜一

 ミドルテンポのヘビーチューン「少年よ永遠に」では、吉田が歌心たっぷりのギターソロを聴かせ、「illumination」のシンガロング部分では、マスク着用で声が出せないオーディエンスに向かって柳田が「いつかこの曲一緒に歌おうね」と呼びかける。さらに、ちょうどこの日メジャーデビュー2周年を迎えた彼らは、そのメジャーデビュー曲となる人気曲「泡沫花火」をここで演奏し、感謝の気持ちをパフォーマンスに込めた。

 前半のハイライトは、ラッパーのRin音をゲストに迎えて披露した「六畳の電波塔」だ。混迷を極める世界情勢に警鐘を鳴らすべく、世界が崩壊してしまった未来を舞台にしたSF仕立てのメッセージソングである。ツアーロゴが大きくプリントされたバックドロップに無数のレーザー光線が当たり、まるで焼き落ちるようにバックドロップが振り落とされ、その背後から巨大な照明タワーが出現するという、スペクタクルなオープニングの演出に度肝を抜かれる。それも束の間、Rin音と柳田が時にメロディをハモったり、時に掛け合いでラップを繰り出したり、息の合ったコンビネーションでオーディエンスを魅了した。

 「愛のけだもの」では妖しいファンクビートの上で、ファルセットと地声を巧みに織り交ぜた艶やかなボーカルを披露したかと思えば、続く「夜永唄」では一転、シンプルなピアノをバックに切ない歌声が聴き手の心を震わせる。息継ぎさえもメロディの一部のように響かせる、柳田の類稀なる表現力に圧倒されていると、パッドを駆使した黒川のリズムに合わせて桐木がグリッサンドを多用しながらエモーショナルなベースラインを紡いでいく。

 「あなただけ」を経て、シューゲイザー〜ポストロック的なアプローチのインスト曲から「イリーガル・ゲーム」へとなだれ込むと、そのプログレッシブなアンサンブルに早くも二度目のピークが訪れる。畳み掛けるように演奏された「揺らめいて候」では、途中でオーディエンスとのハンドクラップ&レスポンス。徐々に複雑になっていくハンドクラップのパターンを、戸惑いながらも必死でコピーするオーディエンス。気づけば会場は一体感に包まれていた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる