ao、リアルな経験が反映された“本心”を伝える手段 初ライブを経て振り返るリスナーの存在と目指すアーティスト像

ao、初ライブを経た現在のモード

 ao――彼女は音楽の中で自分の心を大っぴらにし、あなたの心と繋がろうとしている。

 昨年9月に15歳でメジャーデビューを果たし、今年5月に初ライブ『ao SHOWCASE - in the sound -』を開催したaoが、6月8日に最新曲「リップル」をリリースした。

 初ライブや、新曲でも際立っているメロディ・歌詞、曲全体の世界観に表れる彼女の独自性を紐解こうとao本人にインタビュー。小学生の頃からニンテンドー3DSでYouTubeに上がっている映像を見漁って、K-POPを入口にして欧米のカルチャーに関心を持ったという背景は、今の10代ならではの流れであり、aoならではの感性だと言えるだろう。音楽を深く掘った上で、自身の内面を見つめながら書き上げた楽曲たちは、同世代だけでなく大人たちの心も突き刺す強度を兼ね備えている。さらに彼女の作品は、時を越えても色褪せない音楽を作りたいという強い意志を感じさせる。

 もっと広い世界を知りたいという欲望を抱えて歩みを進めるaoの人物像とアーティスト像の核心に迫るべく、彼女の内面に潜り込ませてもらった。(矢島由佳子)

リスナーは音楽を通して考えや曲の捉え方を一緒に作っていける存在

――先月の初ライブはどうでしたか?

ao:終えてみての感想は「楽しかった」なんですけど、始まる前は緊張してしまって(笑)。緊張と、興奮と、「上手く歌わなきゃ」とか、いろんなことを考えながらステージに立ってました。

――でもライブ中にだんだんと、頭の中の邪念を振り払って音に浸れていたのでは? そんな感覚が伝わってきました。

ao:はい、だんだんと。今回のライブで初めてファンの方々を目の前にして、「こういう方たちが私を応援してくれているんだ」ということも感じました。今までは、学校のみんなや両親とか、限られた人しか感じられていなかったんですけど、いろんな人たちに自分の音楽が届いていることを実感できました。

――ステージに立って人前で歌うことの楽しさや気持ちよさを、aoさんはどういうところに感じました?

ao:誰に歌っているかが、そのときだけ明確なのが面白いなと思いました。今までとは違う考え方や捉え方で曲を届けることができるので。ざっくり言うと、たとえば「リップル」だったら、もともとはシナリオをしっかり作った曲なんですけど、ライブのときだけは今目の前にいるあなたとのお話にするとか。

――aoさんにとって、聴き手の存在は大きい?

ao:はい、大きいです。「リップル」をリリースしたときも、SNSに投稿した私の曲に対する考えに、「私はこう思います」みたいな意見の書き込みがあって。音楽を共有しているからこそ、考えや曲の捉え方を一緒に作っていける存在だと思います。

――aoさんはご自身の考えや出来事を曲にしていることが多いじゃないですか。それが誰かに聴かれることによって、また違う感覚が生まれるのが面白い?

ao:そうです。私だけの話だったのが、誰かの話になって、だんだん繋がって、みんなが共有してくれて、それを受けて私もまた考え直す、というのが面白いなと思います。

――改めて、最新曲「リップル」はどういうことを書いた曲ですか?

ao:これは映画のポスターを見て、映画の内容とは関係なく自分が想像した物語から書いた曲です。なんとなく人生を過ごしてきて、誰かの書いたシナリオに沿って生きている気もするし、自分で選択して生きている気もする、そんな曖昧さを感じながら生きてきた主人公がいて。長い長い夏休みのある日突然、主人公を今の世界から引っ張り出して、もっと広い世界や考えを見に連れていってくれる存在が現れる。そして、その存在と一緒にいろんなところを巡る。主人公は今まで自分の世界に閉じこもっていたから、自分の存在価値とか広い意見や考え方を知らずに生きていたけど、連れ出されていろんな景色を見ることによって、主人公の考えも広がって、未来を想像するようになった。そんなときに、その存在はいなくなっていた。その存在は果たして自分が作り出したものだったのか、本当にいたのかはわからないけど……という、ひと夏の物語、一瞬の不思議な出来事を想像して作りました。

ao - リップル (Official Video)

――2時間の映画にできるくらいの壮大なストーリーですね。他の曲もそこまでしっかりとしたシナリオが自分の中であるんですか?

ao:いや、他の曲は私の実体験がもとになっているので、ストーリーというよりかは、自分が感じたことや見たものを書いています。

――今回ここまでストーリーを組み立てて曲を作ろうと思ったのは、どうしてだったんですか?

ao:中学校を卒業して初めて書いた曲なんですけど、私、中学校ってちょっと堅苦しくて苦手だったんです。卒業してから開放的な気持ちだったので、曲にできるような衝撃的な出来事がなくて(笑)。中学から高校に進学するという境目でもあるので爽やかな曲を作りたいと思っていたところで、グラフィックが綺麗なポスターを見かけてピタッとハマりました。

――ストーリーだと言いながらも、ご自身のリアルな経験や感覚も混ざっていますよね。aoさん自身も「なんとなく生きてきた」「誰かの書いたシナリオを生きているような気がする」という感覚が、これまでありました?

ao:そうですね。中学の3年間は特にそう感じていたんじゃないかなと思っていて。私、学級委員と部長をやっていたんですけど、相手の顔色を窺いながらクラスをまとめたり、「本当はもっとこういうクラスにしたい」「こういう意見を出したい」と思いながらも「でも先生はどう思うかな」って考えたりしていたので。

――aoさんにとって、生きていく上で、歌詞を書くという行為はどういうものなのでしょう?

ao
ao:歌詞は曲作りの中で一番難しいなと思うんですけど、最近は日記みたいに書いているというか。ただ日記といっても、あった出来事を書くんじゃなくて、最近思ったことを書いています。メロディに乗せると普段言えないようなことも言えたり、日本語だと恥ずかしいけど英語にするとサラサラ言えたり。そういう方法を使いながら自分の本心を伝えるための手段だなと思います。

――だからこそ、自分の本心を出したものに対してリスナーから反応がもらえたり、誰かと繋がれたりすると……。

ao:嬉しいです。

――aoさんの音楽って、自分をよりよくしたい、もっと広い世界を見たいと思っている人が、自分を前に進めていくための歌詞を書かれているなという印象があるのですが、そういう感覚はありますか?

ao:そうですね、たしかに。悲しい出来事をつらつら語っている歌詞よりも、自分の中で結論を出した上で、全体を伝えたくて。曲になるのは悲しいことやつらいことがあったときが多いんですけど、その瞬間に書くというよりは、自分の中で気持ちを整理して、結果も全部出たタイミングで書くようにしています。

――自分の心や脳内を整理するために曲を書く、というより、整理しきってから書くんですね。

ao:はい。

――それもaoさんの性格が出ているのかなと思いました。リスナーに対して中途半端な自分は出したくない、できあがったものを振る舞ってあげたい、みたいな気持ちの表れでもあるのかなと。

ao:そうですね。自分の意見に対して意見をもらいたいので。「こうだと思う」と言って、「こうじゃない?」って言われるのが好きなので。そのために歌詞を書いていると思います。

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