オレンジスパイニクラブ、“ライブハウス”でロックバンドが放つ輝き ハンブレッダーズ招いた対バンツアー東京公演レポ

オレスパ、対バンツアーレポ

 ロックバンドとはライブハウスで最も輝く生き物なのだと、改めて実感させられた夜だった。

オレンジスパイニクラブ
オレンジスパイニクラブ

 全国5カ所をまわったオレンジスパイニクラブの対バンツアー『混ゼルナキケン』。アルバムやシングルのリリースに伴うツアーではないが、TETORA、時速36km、ユタ州、リュックと添い寝ごはん、ハンブレッダーズと競演したこのツアーは、スズキユウスケ(Vo/Gt)曰く「シンプルに俺らが好きなバンドを呼んでツアーやりたいなと思って」というメンバーの想いから実現したそうだ。

 ツアーファイナルの渋谷CLUB QUATTRO公演に出演したハンブレッダーズは、オレンジスパイニクラブの前身バンド・The ドーテーズに因んだ「チェリーボーイ・シンドローム」(超レア曲である)など10曲を演奏。その後ステージに登場したオレンジスパイニクラブは、メジャー1stフルアルバム『アンメジャラブル』のラストナンバー「理由」からライブをスタートさせた。さらに「タルパ」、「スリーカウント」を続けて演奏し、冒頭3曲を挨拶に変える。

 躍動的なプレイでバンドのダイナミクスを握る ゆりと(Dr)。歌心のあるベースラインをクールに奏でる ゆっきー(Ba/Cho)。搔きむしるようにギターを鳴らし情熱を燃やす弟・スズキナオト(Gt/Cho)と兄・ユウスケの鈴木兄弟。パンクをルーツとしたこのバンドのサウンドからは“音なんてデカくてナンボ”的な精神を感じるし、初めてライブを観た時には確実に衝撃を受けるだろう――というのは前回のライブレポートにも書いた通りだが、そのインパクトはこの日も健在。いや、むしろハンブレッダーズによってすでに温まっていた観客を前に、喜びを感じながら、遠慮も恐れもなく全力でダイブしにいっている印象を受けた。

 爆音のバンドサウンドは聴く者の心をかき回し、高ぶらせる種類のものだが、そこに楽器隊が全力で鳴らそうとも力強く浮かび上がってくるユウスケのボーカル、そしてメンバーのコーラスとともに歌い上げる青春のメロディという“泣き”の要素が乗っかる。その結果生まれるのは、拳を突き上げながらも、心がじんわりと温かくなり、涙腺が緩んでしまうような泣き笑いのテンション。声は出せずとも手拍子をしたり思い思いに体を動かしたりすることで熱量高くリアクションする観客を前に、ユウスケは、ハンブレッダーズのライブ中のムツムロ アキラ(Vo/Gt)のMCに同意する形で「確かに拍手がすごいです。コロナ前を思い出すような景色ですよ」と語った。感染症対策のため、様々な制限がある今はかつてのライブハウスにあった光景が完全に“戻った”とは言い難い。しかし、その熱量を思い出させてくれるほどの光景がこの日渋谷で生まれていたこと、そしておそらく他4公演でも生まれていたこと自体が一つの希望なのではないだろうか。

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