SPECIAL OTHERSがライブで生み出す至福の時間 15年の歴史を色鮮やかに響かせたBillboard Live TOKYO公演

スペアザ、15周年記念Billboard公演レポ

 ロック、ジャズ、ラテン、ファンクなどのテイストを織り交ぜた音楽性、メンバー4人による高い技術と奔放な遊び心に溢れたアンサンブル、そして、高揚感と叙情性を同時に感じさせてくれるメロディライン。15周年を記念したBillboard Live TOKYO公演でSPECIAL OTHERS(以下、スペアザ)は、その独創的なサウンドスケープを存分に体現してみせた。何よりも印象的だったのは、全身で音楽を楽しみ、オーディエンスと一緒に空間を作り上げようとする姿だった。

 2020年5月に5年ぶりのフルアルバム『WAVE』をリリース。アルバムのリリースツアーはコロナ禍の影響で軒並み中止になったが、同年9月に東京・日比谷野外大音楽堂、10月には大阪・大阪城音楽堂公演を開催。さらに2021年の秋に15周年を記念したツアーを行い、この春には“SPECIAL OTHERS ACOUSTIC”として野音ツアーを成功させるなど、変化し続ける状況にアジャストしながら、前向きに音楽活動を継続してきた。そして6月には通算8作目となるニューアルバム『Anniversary』をリリース。開放感と精度の高さを併せ持ったサウンド、ルーツに根差しながらも自由度を増した音楽性を軸にした本作の充実ぶりはそのまま、この日のライブに反映されていたと思う。

SPECIAL OTHERS

 筆者が観たのは、2ndセット。開演時間になると会場の照明が落とされ、宮原"TOYIN"良太(Dr)、又吉"SEGUN"優也(Ba)、柳下"DAYO"武史(Gt)、芹澤"REMI"優真(Key)がステージに登場。宮原がビートを刻みはじめ、又吉、柳下、芹澤が音を重ねることで浮遊感のあるサウンドが生まれ、その感覚を持ったまま1曲目の「NEW WORLD」へ。

 “人力Underworld”をテーマにしたというダンサブルな楽曲だが、シンプルな16ビートを軸に4人のリズムとメロディが絡み合い(特に芹澤が奏でるアナログシンセは印象的だった)、有機的にしてスペーシーな音楽空間へと結びつける演奏はきわめて鮮烈。冒頭から“最新型のスペアザ”が炸裂し、心と身体を強く揺さぶられてしまった。

 続いてはアルバム『WAVE』の収録曲「JAM」。宮原のキックとハイハット、そして芹澤のオルガンが会話するようにイントロを描き、柳下のギターカッティング、又吉のエレクトリックアップライトベースが加わった瞬間に心地よいグルーヴが出現。ポップな手触りの主旋律は楽曲が進むにつれてドラマ性を増し、会場全体を幸福感が包み込む。一瞬のブレイクを挟むたびにダイナミズムを増していくパフォーマンスを含め、やはり彼らは生粋のライブバンドなのだと強く実感させされた。

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