カメレオン・ライム・ウーピーパイ、DIYで生み出すハイブリッドでポップな音楽 活動の背景と現在地を語る

カメレオン・ライム・ウーピーパイの現在地

 オレンジ色の髪が印象に残るボーカル・Chi-によるソロプロジェクト、カメレオン・ライム・ウーピーパイ。「仲間」であるWhoopies1号・2号とともに完全DIYで生み出すハイブリッドでポップな楽曲は、日本のみならず海外でもじわじわと人気を獲得、英国のダンスミュージッククリエイター・TCTSとのコラボ楽曲をリリースするなど、その活躍の幅を広げている。

 今回はそんなカメレオン・ライム・ウーピーパイにリアルサウンド初のインタビューを行った。MVの小道具集めから自分たちで行う徹底的なDIY精神はどこから生まれたのか、Chi-はなぜ音楽を始めたのか、Beastie BoysやBECKなど90年代の洋楽にJ-POP的なポップセンスを組み合わせた音楽性はどのようにして作り上げられるのか。そして最新作であるEP『MAD DOCTOR』に見える「カメレオン・ライム・ウーピーパイらしさ」とは。Chi-にとことん語ってもらった。(小川智宏)

音楽をやり始めたら「生きてるな」って感じがした

――3人で活動を始めてからもう5、6年ぐらいになるそうですが、ここまでの道のりを振り返って、どういうふうに感じますか?

Chi-

Chi-:最初にWhoopiesに出会って音楽始めたときから……というか、自分が音楽を始めた瞬間から自分が「こうなったらいいなぁ」と想像していた通りに運良く来れている感じなんです。曲を作ってくれる人がいたらいいなと思ったらWhoopiesと出会ったりとか。だから今の状況も、最初に想像していた感じに近くて。私たちの音楽は広がるまでにちょっと時間がかかるかもなという覚悟もしていました。

――そういうビジョンは本当に音楽を始めたときからあったんですか。

Chi-:結構ありました。その時々で「こうなったら次こうかな」みたいな感じで、ちょっとずつ変わっていくんですけど、大体のビジョンは固まってる。なので、そこがちょっと違う感じになっても「こうなるから大丈夫だろう」ってブレずにいられてるんだと思います。

――Chi-さんのビジョンの最終到達点というか、Chi-さんに見えている山の頂上はどういう場所なんですか?

Chi-:私たちの音楽が日本のスタンダードに加わるということ。それが目標というか、そうなると思ってやってます。今は服を作ってる人であったり、美容師さんであったり、何かを作ったりしている方々にちょっとずつ認知していただいているなぁという感じですけど、ここからいろんな人たちに広がってくれたらなぁって思ってます。

――なるほど。カメレオン・ライム・ウーピーパイは音源からビジュアル、MVにいたるまでDIYですべてをやっていますよね。一貫してそういう形でやってきてるのは、どういうポリシーがあってのことなんですか?

Chi-:最初は本当にお金がなくて、自分たちでやるしかなかったんでそうしていたんです。MVを映像のプロの方に頼んでみたこともあるんですけど、やっぱり私が想像してるやつとは少し違ったりとかして。ニュアンスを伝えるのが難しくて、だったら自分たちでやった方がいいなという感じで、今もずっと自分たちでやってます。

――ここまで活動してくるなかで、ターニングポイントを挙げるとしたら?

Whoopies1号・2号

Chi-:もともと曲作りに関してはずっとWhoopiesとやっているんですけど、ライブに出るのは私1人だったんです。ストリートライブも私だけで、表に出るのは1人だったんです。それでクラブイベントとかにも出ていて。1年ぐらい経った頃、バックDJの方が手伝ってくれるようになって、私が歌って、後ろにバックDJの方がいるみたいな感じでライブをやるようになった。でもあるイベントの前日に3人とDJの方でリハをやりましょうと渋谷のスタジオで待ち合わせたら、そのDJの人が来なくて。あれって思っていたら、連絡も取れなくなっちゃって、そのままいなくなる、というプチハプニングが起きて(笑)。でももう前日だしイベントを飛ばすわけにもいかないから、「じゃあWhoopies、出よう」ということになって、2人が初めてライブに出たんです。そこでやってみたら意外と楽しかったというか。まぁ3人 でやるしか無かったので(笑)。そこからWhoopies1号がベースを弾けることがわかったんでベースをやるかとか、2号はドラムもちょっとできるからドラムをやるかとか。そんな感じでだんだんカメレオン・ライム・ウーピーパイのライブができていきました。

――今の形は必要に迫られてできた部分もある、そういう経緯があるからかもしれないですけど、Chi-さんとWhoopiesのお二人の関係性は独特ですよね。よく、シンガーとプロデューサーチームみたいな形はあるけど、それとも違うし、バンドかというとそういうわけでもない。

Chi-:そうなんです。最初は「曲を作る人と歌う人」だったんですけど、ライブに出るようになってからはより立場が対等になったというか。結構何でも言い合う感じになりました。やっぱり3人でやってる方が楽しいですし、誰かがミスしてもみんなの責任みたいな感じで(笑)。1人でやっているときは必死な感じが多かったんですけど、3人でやるともうちょっとラフに、楽しくできるなって。バランスよくできている感じがします。

――でも、音楽を始めたときはChi-さん1人でやっていたわけじゃないですか。それはきっと、自分がイメージしているものを100%の形で表現するにはそれが一番早いというのもあったんですよね。こうやってグループでやれているというのはChi-さん自身にとっても不思議じゃないですか?

Chi-:最初はギターで曲を作ってたんですけど、ぐちゃぐちゃで、相当ヤバい曲だったんです。自分の中で作詞はできるなっていうのがあったんですけど、作曲に関しては私が1人で全部やっていくとなると相当時間がかかるし、トラックの作り方を習得するまでもめちゃくちゃ時間かかるかなとか考えたら、やっぱり誰か仲間が必要だなと思って。そうしたら2人がちょうど現れてくれて、彼らがすごく私の意見を尊重してやってくれるのでとってもありがたいなぁと思っています。私に「こうした方がいいんじゃない?」とか言うタイプの人だったら、速攻やめてたと思う(笑)。

――そもそも、その音楽をやろうと思った一番のモチベーションは何だったんですか?

Chi-:高校を卒業して、「なんで生きてるんだろう」みたいなことを考えていて。もともといちいち細かいことを考えすぎちゃうところがあるんですけど、それが高校を卒業したタイミングで爆発したというか。最後に自分の好きなことをやろうと思ったら、音楽かなと思って、音楽を突然やり始めたんです。別にうまくいってもいかなくてもどうなってもいいしって。でも音楽をやり始めたらすごく「生きてるな」って感じがしたんです。

――カメレオン・ライム・ウーピーパイは、ダンスミュージックとして高揚感のあるサウンドを作ってきていると思うんですけど、Chi-さんの書く歌詞は一貫して内面が色濃く出ている感じがするんですよね。

Chi-:そうですね。歌詞は自分が考えてることや、音楽を始める前の私が聴いたらどう思う? とか、自分に向けて書いているものが多いんです。わかりにくいというか、どういう意味ですかって質問されることもあるんですけど、でもそのわかりにくさも私の内面が出ているというか、自分でも何を言っているかわからないような感じがそのまま歌詞に出てるんだと思います。

――すごくパワフルでポップなんだけど、同時にリアルな自己表現でもあるというのが重要だなと。でも、最近は楽曲提供をしたり、カバーしたり、他のアーティストとコラボしたり、少しずつ表現の仕方が変わってきているようにも見えます。

Chi-:楽曲提供に関しては、私以外の方が歌うので。自分が歌うときって、やっぱり自分が思ってることじゃないと書けないんですよ。「ちょっときれいなことを言おう」とかができないし、そこにこだわって書いているんですけど、他の方が歌うときはそこをもうちょっと幅広く、もうちょっと爽やかに歌詞を書けたりする。そこが面白いですね。3人でやっていたらこのジャンルはやらないとか、ここまではやらないなっていうのができるのがゲームっぽくて。クイズを出されてる感じというか、それがすごく楽しいです。

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