クボタカイ、多彩な音楽で切り取る日常の景色 初のバンドセットライブに臨んだ特別な一夜

クボタカイが切り取る日常の景色

 3月22日、クボタカイのワンマンライブ『シン・クボタ』がSHIBUYA CLUB QUATTROで開催された。

クボタカイ

 アカペラの歌いだしで「Wakakusa Night.」を披露し、ライブは開幕。息成分の多い声で心をほぐすような歌声を紡ぐと、〈でも会いたい愛が痛いくらいに〉というリズミカルな韻がキャッチーな「Youth love」に続く。クボタにとって初のバンドセットでのライブであったこの日、グルーヴィーなバンドサウンドが彼の楽曲により温かさとふくよかさを与える。シンプルながら芳醇なリズムが、クボタの紡ぐ長くさりげない韻にしっかりと絡み合った。

 バンドのゆったりとしたグルーヴとシンセのリフが心地いい「春に微熱」では、悠然としたリズムとクボタの囁くような声が心地よく会場を彩る。会場を雨音が包んだ「博多駅は雨」では〈渋谷駅は雨〉と歌詞を変え、冷たい雨が降り注いだこの日の会場と結び付けながら湿り気のある空気を演出。自然体に話すような歌声が作り出すノリがオーディエンスを揺らし、ポップスのようにキャッチーに展開する曲調が物語を感じさせながら没入を誘った。

 エレクトロなシンセサウンドが華やかさを作り上げたのは「インサイダー」。「拝啓 (Freestyle) 」では、この日のライブのことやバンドメンバーの話題でフリースタイルラップを紡ぎ、バンドメンバーも表情を崩しながら一体感を高める。控えめながら軽やかなバッキングが明るい「ベッドタイムキャンディー 2号」へ続き、「新曲をやります」と演奏したのは、メロディアスなギターとグロッケンの音色が怪しげな雰囲気を醸した「ひらめき」。同じく新曲の「ピアス」は「ひらめき」とは印象を異にしたポップでキュートな楽曲だ。もの悲しい描写でさえ愛のある温かな音色で優しく包み込み、クラップが明るく彩った。

 日常をリズムに溶かしていくような気持ちよさが漂ったこの日、ライブ中盤のMCで「今日23歳になりました」と伝えたクボタ。リハの際にサプライズでバンドメンバーが「Happy Birthday to You」を演奏してくれたと嬉しそうに話すと、その後ろで顔を見合わせ笑いあっていたバンドメンバーが今だと言わんばかりに「Happy Birthday to You」の演奏で再び祝い、会場は祝福ムードに満ちた。

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