くるり、アレンジ光るダイナミックな演奏で結成25周年をお祝い “終わらぬ旅”を続ける『くるりの25回転』東京公演

くるり結成25周年公演ライブレポ

 くるりの結成25周年記念公演『くるりの25回転』東京公演(東京ガーデンシアター)は、約3時間にわたり25年をじっくり振り返ると同時に、変化を恐れず今も進み続けている彼らの音楽を堪能させるものだった。

くるり

 25曲+アンコール2曲を時系列に演奏していく構成で、岸田繁(Vo/Gt)と佐藤征史(Ba/Cho)の2人に加え、最近の作品に参加してきた顔ぶれを中心に総勢10人のサポートメンバーが曲に合わせて出入りする、客観性を持って選んだ曲を現在形で演奏することで新たな物語を綴ってみせた。

 オープニングは1stアルバム『さよならストレンジャー』から「ランチ」。エレキギターを持った岸田とアップライトベースを抱えた佐藤、サポートドラマーの石若駿の3人だけで始めた演奏は岸田の呼吸に合わせて揺れ、“引き算の美学”とでも言いたくなる練り上げられた簡潔さがある。途中から入った加藤哉子とヤマグチヒロコのコーラスが、この曲が生まれたであろう頃の純粋さを今また輝かせているように思えた。

 2曲目は1997年のインディーズ初作『くるりの一回転』にも収録の「虹」で、松本大樹(Gt)が加わり骨太なオルタナティブバンドらしい演奏に。メジャーデビュー曲「東京」を取り上げず京都時代から始めたのが、くるりらしいこだわりだろうか。「窓」では野崎泰弘(Key)、山﨑大輝(Per)も参加して、起伏に富んだ曲を盛り上げる。そして管楽器担当の副田整歩と大石俊太郎が加わったインスト曲「惑星づくり」は、細やかに入り組む音の響きで、会場内を心地よい緊張感に包んでくれた。

 その緊張を緩めたのは「ばらの花」。腕を高く上げてステージにアピールするオーディエンスも増え、明るい照明の中でコーラスの2人がステップを踏んだ「ワンダーフォーゲル」で会場の空気が温まった。ダンサブルな4つ打ちを人間味ある演奏で聴かせた「ワールズエンド・スーパーノヴァ」になると体を揺らし立ち上がろうとする人もちらほら。声を出せなくとも気持ちは伝えられるのだ。

くるり

 最初のMCで佐藤が「自分たち、結成が1996年で本当は去年が25周年ということで、こういうライブを計画していたんですけど、いろいろあって延びて2022年に。こうして開催できて、たくさんの方に来ていただいて本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。まだまだ前半の前半、これから頑張っていっぱいやりますんで、ゆっくりしてってください」と語る。

 その後、岸田のギターから始めた「水中モーター」は、ボーカルにエフェクトをかけたテクノ調の曲にオーディエンスの頭が揺れている。そんな様子を見ていた岸田が、曲が終わると口を開いた。

「ようさん来はったねえ、ありがとう。お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、25年精魂込めて続けてて、今日は時系列みたいに、昔の曲から順番にやってる感じになっているんですよ。くるりにしては、人気の曲をやっているつもりでございます。本当は26年ですけど25年の節目を、こういう時期ではありますが、皆さんとお祝いできることに心から感謝いたします。ありがとうございます。くるりが、というより曲たちありがとうという感じで、演奏させていただいています。最後までゆっくりお楽しみください」

 ドラマチックな「Morning Paper」から軽やかな「ロックンロール」へ続くと、アリーナ席はほとんどの人が立ち上がり、楽しそうに体を揺らしている。岸田がアコースティックギターに持ち替えた「The Veranda」では、ハタヤテツヤのオルガンが感情豊かな歌を引き立てる。佐藤のベースがグルーヴィに鳴った「BIRTHDAY」の温かさに包まれたところで、第1部が終了した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる