TOMOO、一人ひとりの“YOU”に向けた心の矢印 メジャーデビュー発表、新たなステップに踏み出したWWW Xワンマン

TOMOO、WWW Xワンマンレポ

 シンガーソングライターのTOMOOが2月6日、東京・渋谷WWW Xにてワンマンライブ『TOMOO one-man live "YOU YOU"』を開催した。

 この日の公演は2部制で、新型コロナウイルス感染予防のため第1部、第2部ともに分散入場を実施し、会場内もマスク着用やソーシャルディスタンスが義務付けられていた。筆者が見たのは第1部だったが、制限が課せられた中でも特に混乱はなく、コロナ禍におけるライブでのニューノーマルな楽しみ方を各々が見つけつつあるように感じた。

TOMOO(写真=ゆうゆう)

 定刻になり時計の針音がコツコツと響き渡る中、真っ暗な部屋にいるTOMOOが目の前の扉を開いて光に包まれながら、一歩ずつ前へと進んでいくオープニング映像が流れ出す。その間、サポートメンバーたちがステージ上で楽器のセッティングを済ませ、遅れてTOMOOがステージに登場すると、フロアから大きな拍手が沸き起こった。

 歯切れの良いピアノのバッキングに導かれ、まずは2021年3月に配信リリースされたシングル曲「HONEY BOY」からライブはスタート。洗練されたコード進行とファンキーなカッティングギターが心地よく、その上で伸びやかに歌われるTOMOOのアルトボイスが印象的だ。続く「オセロ」は、Chicagoの「Saturday in the Park」にも通じるようなAOR調のアレンジと、時おりファルセットを散りばめたTOMOOの歌声が絶妙なコントラストを描き出していた。

 「今日は『YOU YOU』に来てくれて本当にありがとう。会いたかったです」と、一つひとつ言葉を噛みしめるように挨拶するTOMOO。会場に向かって元気よく、「今日初めて観に来た人!」と呼びかけると、7割近くの人が挙手する様子に「めっちゃ『初めまして』じゃん!」と驚きながら、「来てくれて本当に嬉しいです。超、刻みます!」と独特の表現で喜びを表していた。

TOMOO(写真=ゆうゆう)

 2020年のアルバム『TOPAZ』から披露した「らしくもなくたっていいでしょう」は、不思議なリズムを刻むピアノと、そこに絡む浮遊感たっぷりのメロディが中毒的な魅力を放つ、ブルーアイドソウルなポップチューン。ライブ中盤に弾き語りで披露した「雨粒をつけたまま」や「地下鉄モグラロード」も、キャロル・キングなど70年代のシンガーソングライターや、大貫妙子、荒井由実ら「ニューミュージック」と呼ばれた日本のポピュラーミュージックに通じるものがある。

TOMOO(写真=ゆうゆう)

 プロフィールによれば、彼女自身はコブクロやYUI、父親からの影響によって曲作りをスタートしたようだが、意識的にせよ無意識的にせよそうした過去の音楽から良質なエッセンスを抽出しつつ、それを等身大の感性で再構築していくことによって、彼女ならではのオリジナリティを獲得しているのだろう。

TOMOO(写真=ゆうゆう)

 個人的に印象深かったのは、弾き語りコーナーの最後に披露した「Cigarette」だ。半音コード進行を多用した幻想的なムードの中、まるで深夜に一人歌っているような優しい声が、次第に熱を帯びてエモーショナルになっていくドラマティックな展開に心奪われた。バンドを率いて元気いっぱいに歌うTOMOOももちろん魅力的だが、ピアノ1台だと彼女のコンポーザーとしての奥深さ、少しハスキーなアルトボイスに含まれる倍音成分の豊かさがより際立つ。

 途中、ラジオの収録を模した映像を流す時間があったが(おそらく感染予防のための「換気タイム」も兼ねていたのだろう)、そこで今回のライブタイトルを「YOU YOU」と名付けた理由が次のように明かされた。

「前回のワンマンが終わった秋くらいから、人のライブを観に行く機会が増えたんです。その時に感じたのは、目の前にいる人に対して『何か』が伝わるのは、『心の矢印』がちゃんと相手に向いている時だということ。人は悩んでいるときや辛い時、『心の矢印』が自分自身、つまりIに向かってしまうと思うんです。でも、自分がライブをやるときは『心の矢印』をひたすらYOUに向けたくて。『YOU & I』の『I』は要らない、だったら『YOU YOU』でいいじゃん! と思ってこのタイトルにしました。おまじないじゃないですけど、このタイトルにはそんな思いが込められています」

 ライブ後半には、Official髭男dismの藤原聡やVaundyらが絶賛した配信シングル「Ginger」も披露。ステージの端から端まで軽快なステップで歩き回りながら、モータウンビートのポップチューンを歌い上げるとフロアからは自然発生的にハンドクラップが巻き起こる。間髪入れずに「POP'N ROLL MUSIC」を畳み掛け、オーディエンス一人ひとりに語りかけるかのように「恋する10秒」を歌って本編は終了。アンコールにはピアノ弾き語りで「高台」を歌ってこの日のライブ第1部を締めくくった。

TOMOO(写真=ゆうゆう)

 小柄でキュートな見た目からは想像もつかないアルトボイスと、同業のアーティストたちからも熱い支持を集めるソングライティング能力を持ち合わせたTOMOO。この日、ポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsよりメジャーデビューすることが伝えられたが、新しいフィールドで彼女がどのような活躍をしてくれるのか、今から楽しみでならない。

■ライブ情報
『TOMOO one-man live at LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)』
2022年8月7日(日)
開場17:00/開演18:00
【会場】
東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
【チケット】
指定席:5,500円(税込)
https://eplus.jp/tomoo/
<オフィシャル1次先行>
受付期間:2月6日(日)21:00〜2月17日(木)23:59
受付方法:抽選
受付枚数:1公演につきおひとりさま4枚まで
※詳細は公式サイトへ

■リリース情報
New Digital Single
『酔ひもせす/グッドラック』
2022年3月30日(水)配信
https://lnk.to/TOMOO_0330

■■TOMOO HP■■
https://www.tomoo.jp/
■■TOMOO SNS■■
Twitter:https://twitter.com/Tomoo_628
Instagram:https://www.instagram.com/tomoo_ssw/?hl=ja
■■TOMOO official YouTube■■
https://www.youtube.com/channel/UCFN-7pQE8CUkruAAJ5IFSLw

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