GLAYはエンターテインメントのあかりを灯し続ける 『FREEDOM ONLY』ツアーで刻んだ忘れられない光景

GLAYはエンタメのあかりを灯し続ける

 2021年10月にリリースしたオリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』を携えたツアー『GLAY ARENA TOUR 2021-2022 “FREEDOM ONLY”』。ラストの地は、さいたまスーパーアリーナ。本稿では2月5日公演をレポートする。

 言わずもがな、こうした時勢。ライブに来るという決意、来ないという勇気、選ぶことさえできない事情があることも、GLAYはすべて分かっていた。その上で開催を決めたバンドとしての気迫が、音に乗って伝わるようなライブだった。「エンターテインメントのあかりを灯し続けよう」。その言葉には、覚悟がある。

 アニメーションに誘われ、1曲目は「GALAXY」。HISASHI、TAKUROのツインギターが主張し合い、融合する。「Hypersonic」では4人がステージのキワまで前進。〈小橋の夢〉、何度聴いてもエモーショナルなフレーズだ。“小橋”ことTERUは、HISASHIと肩を組み向かい合い、少年のように笑っていた。

GLAY(写真=岡田裕介)
(写真=岡田裕介)

 「Winter Moon Winter Stars」では、ステージに炎があがる。〈テレビからはコロナのニュースばかり いつかきっとこの時を懐かしく思うだろう〉というフレーズがはっきりと出てくる同曲。心の奥底から湧き上がる情熱や迫力を感じるサウンドだ。続くは1996年発表のナンバー「月に祈る」。ブルーのライトに照らされ、TAKUROがイントロをつま弾く。カメラに向かって優しく微笑むと、一転して激しいサウンドへ。“GLAYらしさ”を強く感じるアルバム『FREEDOM ONLY』のツアーにおいて、この曲を聴けるとは……驚き以上に納得の選曲だった。走り抜くように歌いあげ、ファンを煽り、ラストにTERUが叫んだのは「横浜アリーナ!」。この日、客席から声が漏れたのは、このときだけだった。「いきなり笑わせちゃダメよね(笑)」と言うTERUの照れ笑いに、どこか張りつめた空気に包まれていた会場が、ふっと緩んだ。

 今回、モニターに歌詞が映し出されるのだが、フォントや効果も楽曲ごとに工夫がなされている。印象的だったのは「漂えど沈まず」。視覚と聴覚で、上質な小説を味わうような時間だった。〈誰のせいでもないから〉と、最後のフレーズを歌うTERUの優しくも切ない声。圧倒され、拍手のタイミングを逃した会場は、ほんのひととき静まり返った。

GLAY(写真=田辺佳子)
(写真=田辺佳子)

 「Tiny Soldier」では、ボーカルとハーモニーを奏でるTAKUROのギター、ノイジーに叫ぶようなHISASHIのギターソロと、リフレインでありながら展開していくメロディに飲み込まれる。アウトロではJIROのベースが歌い、ラストの1音がなんとも不穏で、なんとも魅力的な違和感を放つ。ハジメタル(Key)のイントロに誘われる「Holy Knight」は、「BAD APPLE」から同曲まで続く異彩なパートを、少しずつGLAYサウンドへと帰還させる。クラップとGLAYチョップが炸裂する「シキナ」へと、心地良く流れていく。

 「Runaway Runaway」では「コロナ禍の闇を切り裂け! HISASHI!」と、TERUがギターソロを煽る。パワフルで希望に溢れたサウンドをかき鳴らしながら、メンバーの笑顔が輝く。「笑顔、忘れちゃいけないよね」と、センターに出て、話し始めたJIRO。「初号機、連れてきたぜ!」とベースを高く掲げ、「佐久間(正英/プロデューサー)さんも見ててくれ!」と呼びかけ、かき鳴らすのは、時代を先取りし過ぎたナンバー「SHUTTER SPEEDSのテーマ」。いとも簡単そうに、軽やかに、各々が超絶技巧を繰り広げる同曲。バンド内対バンとでも言うべきかーーそこから「彼女の“Modern…”」への流れは、もはやずるいとしか言いようがない。

GLAY(写真=田辺佳子)
(写真=田辺佳子)

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