『高校サッカー』、熱戦支える応援歌の歴史を紐解く 上白石萌音×森山直太朗「懐かしい未来」も

 昨年12月28日に開会し、1月10日まで開催される『第100回全国高校サッカー選手権大会』。今回も数々の熱戦を繰り広げているが、そんな同大会をいっそう盛り上げているのがイメージソング(応援歌)と応援マネージャーの存在だ。

 もとより、大会歌とは別に、イメージソングを起用するようになったのが第73回大会(1994年度)からである。楽曲はTUBEの「Melodies & Memories」。このイメージソング制度には、高校生を中心とする10代に向けてアーティストや曲をアピールする意味が込められていたのだろう。

1990年代〜サッカー人気が高まり社会的ブームに

 このような背景には、まず日本でのサッカー人気の高まりがあった。当時の日本国内のプロスポーツは野球が人気を博していたが、1993年にJリーグがスタートして以降、特に、ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)が大人気チームになり、CMやバラエティ番組には、鹿島アントラーズのアルシンド・サルトーリが引っ張りだこに。また同年、日本代表チームがカタールで開催されたアメリカワールドカップ・アジア地区最終予選の最終節でイラクと対戦し、あと一歩のところでW杯初出場を逃した通称「ドーハの悲劇」を多くの国民が目撃。小中学生~高校生を中心にサッカー熱が上がり、社会的なブームとなった。

 一方、音楽業界も当時はCDセールスが絶好調。さらに、「Microsoft Windows 95」リリース前のインターネット普及前夜のこの時代、テレビの影響力はすさまじく、楽曲プロモーションにTVドラマ、CMなどとのタイアップは非常に有効であった。そのため、ヒットコンテンツであるサッカーに音楽業界が目を向けるのは当然の流れだったのかもしれない。

 第74回大会(1995年度)のイメージソングには、前年にCDデビューを果たしたばかりのTOKIOの「風になって」が起用された。同年末の『NHK紅白歌合戦』のテーマは世相を踏まえ、「新たなる出発」に。そんな『紅白』でもスペシャルバージョンで披露された同曲は、“明日はやって来る”という前向きなメッセージが込められており、時代を象徴する内容であった。

堀北真希、新垣結衣が印象付けた「応援マネージャー」像

 高校サッカーでは、そういった“旬”のアーティストとメッセージが込められた楽曲が毎年選ばれているが、第84回大会(2005年度)からは女性タレントによる「応援マネージャー」制度もスタート。高校サッカーの魅力を伝える大きな役割を担った。

 初代の応援マネージャーをつとめたのは、堀北真希。堀北は同年のドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で大ブレイク。続く第85回大会の2代目・新垣結衣も、江崎グリコ「ポッキー」のCMで好印象を与え、『ドラゴン桜』(2005年/TBS系)などへの出演で人気上昇中だった。このような今をときめく女性タレントの起用から、「若手女優の登竜門」とも認識されるようになっていった。 

 両大会のイメージソングは、第84回大会はコブクロの「Starting Line」、第85回大会は絢香の「Start to 0(Love)」。どちらの曲も、なにかを探し求めてスタートを切ろうとする人たちの姿が描かれていた。堀北、新垣のフレッシュなムードにもぴったり合っており、以降、イメージソングと応援マネージャーとのマッチングの妙味が話題にあがるようになった。

Starting Line
[絢香「Start to 0(love)」]

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