ボイストレーナーに聞く、俳優ならではの歌の魅力 菅田将暉、松下洸平らに見出す歌詞を重視した表現

 ストリーミングが主流になったことで、様々な楽曲が並んでプレイリストに入ることも珍しくない昨今。その中では、菅田将暉や上白石萌音、松下洸平など、俳優としても活動するシンガーの楽曲も目立つ。演技経験がある俳優の歌ならではの特徴は、どういった部分に見出すことができるだろうか。実際に俳優への歌唱指導を行っているボイストレーナーのミニー・P氏に、俳優の歌の特徴や、魅力について聞いた。

歌詞を優先して歌に取り組む姿勢

「私が出演するYouTubeチャンネル(※1)には俳優の方もレッスンにいらっしゃるんですが、中には音程を取るのが苦手な方もいらっしゃって。その方の認識を紐解いていったら、歌は“歌詞”ד歌い方”だと思っていたんです。つまり、“メロディ”という認識が薄かった。これは極端な例ですが……」

 一般的には歌は歌詞とメロディが一つになり成立しているという認識があるが、この事例は、音楽経験が少ない、あるいはメインではない歌い手が持つ一つの傾向を示していると言う。

「まず、俳優の方は歌詞に対する思いや認識において、他の職業の方との違いがあります。音楽の聴き方一つとっても、歌詞先行で聴いていることが多いようで、歌への感情の乗り方が人一倍速く、強いんです。歌う時は、メロディに歌詞を乗せているのではなく、歌詞にメロディを乗せているといったアプローチですね。そのため、聴き手にも歌詞が印象深く残ると思います」

 演技を主軸として活動する俳優であるからこそ、メロディよりも歌詞を優先して歌に取り組むということは納得感がある。では、具体的な俳優名を挙げながらそれぞれの特徴なども聞いていきたい。アーティストとしてもコンスタントに楽曲を発表する菅田将暉、上白石萌音、松下洸平らの歌の魅力はどのようなものだろうか。

「菅田将暉さんは、フォーキーな歌を歌われていることがありますが、どこかノスタルジックでストレートな表現が印象的です。そして、これは俳優の方全体的に言えますが、1曲を通して大きな声で歌っています。アーティストの方はAメロ、Bメロと段々とボリュームを上げていったり、あえて声を抑えたりして工夫をすることが多いですが、やはり俳優という職業柄、大きな声ではっきりと発音するという意識が潜在的にあるため、その影響が随所に表れているように思います。大きな声で繊細な表現をすることは実は非常に難しいのですが、菅田さんの場合は表現力も高く聴く人を感動させる歌だと思います。また、技術的な特徴でいうと、俳優の方はロングトーンが映える曲でヒットしていることが多いですね」

菅田将暉『ラストシーン』

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