ゆるミュージックほぼオールスターズが体現する多様性 “ゆるい活動”に秘められた世の中を変えるための信念

ゆるほぼ、“ゆるい活動”に秘められた信念

 歌手として活躍するトミタ栞を中心に、多様性溢れるメンバーによって結成された異色のバンド・ゆるミュージックほぼオールスターズが、11月22日に「るるる生きる」の配信リリースでデビューを果たした。誰でもすぐ演奏が楽しめる「ゆる楽器」を手に、“ゆるさ”を広めるために活動を行うと言う“ゆるほぼ”。トミタの他、進行性難病を抱えながらもシンガーソングライターとして活動し、東京パラリンピック閉会式に車椅子ドラムで出演した経験を持つ小澤綾子、LGBTQ活動なども積極的に行うアートディレクターの五十嵐 LINDA 渉、トミタの所属事務所であるソニー・ミュージックアーティスツの後輩で子役として活動中の村木ひらりの4人が、“ゆるほぼ”が目指す優しい世界を語る。(榑林史章)

ゆる楽器をきっかけに、きっと音楽の価値観が変わる

ーーゆるミュージックほぼオールスターズの皆さんですが、結成のいきさつはどんな感じだったんでしょうか。

五十嵐 LINDA 渉(以下、LINDA):もともと澤田智洋さんという方が、「ゆる」という言葉は「カワイイ」の次に世界共通の言葉になるんじゃないかということで活動されていて。その活動の一環として、「世界ゆるミュージック協会」というものを立ち上げて、「ゆる楽器」を開発したところから全てが始まりました。ゆる楽器というのは、やりたいと思っても難しそうだと思われてしまうハードルや垣根を取っ払って、誰でも演奏できることをコンセプトにした楽器で、ソニーもテック技術を駆使してゆる楽器の開発に参加しています。それを使った子ども向けの体験イベントを開催したりしていく中で、いろんな人たちと出会い、バンドを結成しましょうということになって。

ーー小澤さんはどのような経緯で参加されたんでしょうか。

小澤綾子(以下、小澤):私は澤田さんといろいろなプロジェクトでご一緒しているんですけど、澤田さんは福祉を今までにない形で世の中に発信していらっしゃる方で、澤田さんの活動や理念に感銘を受けて尊敬しています。私自身も障害とか病気に関係なく、世界を広げたいと思って歌の活動もしているのですが、楽器は一度もやったことがなくて、今回澤田さんに声をかけてもらった時、最初は私には無理だと思ったんです。そうしたら「大丈夫。これはそういう音楽弱者がミュージシャンになれるプロジェクトだから!」と。楽譜が読めなくて楽器ができなくても、どんな人にも音楽ができるという選択肢を広げるプロジェクトにしたいから、「楽器ができない小澤さんにこそやる意味がある」と言われて、そそのかされて入りました(笑)。

トミタ栞

ーー小澤さんは「タイププレイヤー」というゆる楽器の担当なんですよね。

小澤:はい。パソコンのキーボードの形をした楽器で、タイピングをすると音が鳴るんです。私は普段は会社員をしているので、パソコンは得意なんですよ。パソコンを打つ感覚でキーボードが弾けるので、社会人3年目以上のパソコンスキルがあれば誰でも弾けますし、ブラインドタッチができたら、もう余裕だと思います。

LINDA:楽譜もドレミの音符が並んでいるのではなく、AとかBとか文字が並んでいて、その文字を打てばメロディになるみたいな仕組みで。

トミタ栞(以下、トミタ):ウルトラライトサックスは鼻歌を歌うと音が出るんです。だから楽譜を覚えなくても、鼻歌で歌えればそのメロディが鳴るというもので。

LINDA:ひらりちゃんは、ドラムとサックスなんだよね?

村木ひらり(以下、村木):私は小さい頃にピアノをやっていたんですけど、他の楽器はやったことがなかったので、ピアノ以外の楽器ができて楽しいです。

ーーLINDAさんは、もともとどんな仕事をされているんですか?

LINDA:今も本業はクリエイターなんですけど、このバンドに入ったのも、触るだけで音が鳴るHaraDrumsというドラムのゆる楽器のデザインをお願いされたのがきっかけです。そのあとバンドを組むからということで、メンバーのキービジュアルやアートディレクションもお願いされまして、「お仕事もらえてラッキー!」と思っていたら、「いや、LINDAもメンバーだから」と(笑)。でも楽しそうだったから、「本業が忙しい時は出られないですけどそれでもいいですか?」と聞いたら、「いいよ」とゆるいお返事をいただいて、その2週間後にはゆるミュージックチームのZoomミーティングにも参加していました。結局は表にも出るスーパー裏方みたいな感じです(笑)。

ーートミタさんはずっと音楽をやってきて、普段は接することのない人たちとバンドをやることに対しては、どんなお気持ちですか。

トミタ:まだそれほどお互いをよく知らないので、これからそれぞれの話をたくさん聞きたいと思っていて。仲良くなって、バンドを通して絆を深めていければいいなと思っています。でも、みんないい人たちなのは見ればわかるし、深い話をしなくても普通の会話の中から感じる人となりだけで、わかった気はしています。

五十嵐 LINDA 渉

ーーまさに多様性を象徴したようなバンドですね。

小澤:多様すぎて収まり切っていない感じがあるけど(笑)。

LINDA:謎のキャラクターまでいるし。大福くんとか。

ーー活動のテーマはあるんですか?

トミタ:自分たちの曲を聴いてもらいたいのはもちろん、ゆる楽器の存在が広まってくれたらいいなと思っています。私たちもゆる楽器でバンド演奏していますし、“ゆる”という言葉が広まることで、澤田さんのテーマでもある“世界をゆるめること”への協力ができればいいなと。

小澤:単純にみんなが楽器を楽しんでくれたらいいよね。誰でもできる楽器だから、1年後にはメンバーが増えている可能性もあります。

ーー「るるる生きる」の歌詞にも出てきますけど、Fコードが押さえられなくてギターを諦めた人が世の中にはごまんといます。そういう人の希望になるわけですね。

トミタ:それは私の実体験です(笑)。5年くらい前にギターを買ったんですけど、いまだにうまく弾けなくて。でも弾きながら歌いたいという願望があって、悩んでいる時に今回のお話をいただいたので、楽器ができない人の気持ちは身に染みてわかっているつもりです。だからその歌詞だけは余計に感情移入して歌いました。例えば、作曲をしたいけど、楽器ができないから作曲ができないと思っている人もいっぱいいるじゃないですか。そういう人がゆる楽器を手にしたら、きっと新しい音楽を生み出してくれると思うんですよね。そうなったら、きっと音楽の価値観も変わると思うんです。

パラリンピック閉会式でパフォーマンスした車椅子型のドラムが再登場

ーーLINDAさんは「和音グラス」の担当。乾杯してチーンと鳴らす楽器とのことで。

LINDA:3人でやって完成する楽器で、それぞれのグラスに引かれている線まで飲み物を注いで乾杯すると、和音が鳴るように設計されているんです。私はそれを一人で担当しているから、永遠に完成しないという。ねえ、誰か一緒にやらない?(笑)

小澤:一緒にやろう!

ーー(笑)。「るるる生きる」のMVはポップでキラキラとして、明るく楽しい映像で、自然と笑顔になりました。

トミタ:あのMVもLINDAさんのディレクションなんです。

LINDA:一貫して「希望」をテーマに、前進するイメージで作っています。バンドができた時のキービジュアルも、全員前に進んでいるような動きにして、背景も夜明けをイメージしています。「るるる生きる」のMVは、その夜明けから朝陽が昇りましたという感じです。今後1年くらいは、空をテーマにやっていきたいと思っていて。

ゆるミュージックほぼオールスターズ「るるる生きる」Music Video / Yuru Music Almost All Stars “Rururu Ikiru”

ーーひらりさん、撮影はどうでしたか?

村木:すごく楽しかったです。撮影は初めてだったから大丈夫かなって、最初は不安もあったんですけど、始まったら全然平気でした。

LINDA:MV撮影の時には、すでにこなれ感があって。これは大物になるって思いました(笑)。

ーーお気に入りのシーンはありますか?

村木:みんなで楽器を演奏しているシーンが好きです。

トミタ:MV撮影の時は緊張しなかった?

村木:最初だけちょっとしたけど、大丈夫でした!

小澤綾子

ーー小澤さんはいかがでしたか?

小澤:みんなで一緒に、1つのものを作り上げる楽しさがありました。みんなほとんど初めましてで、それぞれバックグラウンドも違うけど、「いいものを作ろう!」という1つの目標に向かって動いていたので、初めて気持ちが1つになった瞬間でした。撮影時間も長かったから、それもあってより1つになれたと思います。

ーー車椅子も撮影用に作ったんですか?

小澤:MV撮影の時は、私がパラリンピックの閉会式でパフォーマンスした時に使った、YAMAHAとYAMAHA発動機が作っている車椅子型のドラムをお借りしました。

トミタ:あれって車椅子自体がドラムなんですよね?

小澤:そうそう。ホイールの部分を叩くと音が鳴るようになっていて。

LINDA:初ライブの時もその車椅子でやったんだよね。

ーー初ライブはいつやったんですか?

トミタ:10月10日に六本木ヒルズで行われた『J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021』、通称「イノフェス」というイベントがあって、無料観覧席のステージでライブをやらせていただきました。

LINDA:テクノロジーと音楽をテーマにした祭典で、世界ゆるミュージック協会のブース展示もあって、その一環で「こういうバンドを結成しましたよ」というお披露目的なライブだったんです。

村木ひらり

ーー反響はどうでしたか?

トミタ:私たちのライブの形が見えた気がしました。ゆるミュージックでゆる楽器と言いつつも、曲は決してゆるいわけではなく王道のポップスだと思うから。お客さんも初めて聴く曲だったんですけど、すごく盛り上がってくれてよかったです。ひらりちゃんも観に来てくれて。

LINDA:本当は一緒に出たかったけど、夜のイベントだったからひらりちゃんは出られなくて。その時は、私とトミタちゃん、大福くん、小澤さんの4人で出演しました。

ーーひらりさんは、皆さんのステージを見てどうでした?

村木:初ライブだったのにすごく盛り上がっていて、私も早く一緒に出たいなって思いました。

小澤:みんなでステージに立つ時が楽しみだね!

ーーその初ライブでもお披露目された「るるる生きる」ですが、シンプルにいい曲だと思いました。まずファンファーレのように始まって、急展開しますけど。

トミタ:そうそう(笑)。前奏とは別の曲にみたいですよね。

LINDA:いくつかの曲がミックスされたような感じだから、歌うのがすごく難しそうだって思ったんだけどーー。

トミタ:かなり覚えやすいですよ。

小澤:前奏の後、〈ゆるゆるゆるゆる〉って歌いながら手をグルグルやって踊るんですけど、ライブの時はお客さんも一緒に踊ってくれました。あの振り付けもLINDAさんなんです。

LINDA:その場で振り付けしました(笑)。

ーー本当に何でもやってますね。

LINDA:ライブの時に振り付けがあったほうがいいんじゃないかという話になって。小さい子どもも一緒にマネできるのがポイントです。

小澤:実際にお子さんからすごく反響があって、「うちの学校に来てやって欲しい」ってすごく言われました。

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