Glass Animals、「Heat Waves」なぜロングヒット継続中? 多くの人の“パーソナル”と共鳴する楽曲の成り立ち

参照:https://spotifycharts.com/regional/global/weekly/latest

 Spotifyの「トップ50(グローバル)」は、世界的に最もストリーミング再生された曲をランク付けしたチャート。本連載では、同チャートを1週間分集計した数値のデータを元に、グローバルな音楽シーンの潮流をお届けする。第3回となる今回は、10月7日公開(9月30日~10月6日)のチャート見つつ、「Heat Waves」がロングヒット中のGlass Animalsを紹介していく。

 1位と2位は先週から同じくザ・キッド・ラロイとリル・ナズ・X。Glass Animalsの「Heat Waves」が3位に上昇し、2020年にリリースされた楽曲にも関わらず上位をキープしている。先週から再度大きく上昇したのは、CKayの「love nwantiti (ah ah ah)」である。先週は36位から16位に上昇していたが、今週は16位から9位になっており、なんと今週はリミックスバージョンも17位にチャートインしている。「love nwantiti (ah ah ah)」は2019年にリリースされており、Glass Animalsの「Heat Waves」やMåneskinの「Beggin’」同様、新曲ではない楽曲がバイラルになりチャートインするという、ストリーミング時代ならではの傾向も見ることができる。

CKay - Love Nwantiti Remix ft. Joeboy & Kuami Eugene [Ah Ah Ah] (Official Video)

Glass Animals「Heat Waves」多くの人の心に響いた理由

 イギリスのオックスフォード出身のバンド、Glass Animals。プロデューサーとしても知られるデイヴ・ベイリーが率いる彼らの音楽性はインディー・ロックやサイケデリック・ポップスとして形容されることが多く、全てのアルバムがデイヴ・ベイリーによってセルフプロデュースされている。

 2012年に、<XL Recordings>の一部である<Kaya Kaya Records>から1st EP『Leaflings』をリリースしたGlass Animalsであるが、当時デイヴ・ベイリーは大学で医学を学んでいた。しかしGlass Animalsのライブを見たアデルのプロデューサー、ポール・エプワースに見出されたことがきっかけで、デイヴは医学大学を中退し、音楽活動をより本格化させた(※1)。

 2014年にはデビューアルバム『Zaba』をリリースし、2015年の世界ツアーでは1年間で130公演を開催。そんなGlass Animalsが2016年にリリースした2ndアルバム『How to Be a Human Being』はコンセプトが非常に面白い作品となっている。この作品は、ツアー中に出会った人々をインタビューし、その人物たちについて書いたものであった。そんな「他人のストーリー」を理解し、作品として落とし込んだ『How to Be a Human Being』は2017年のマーキュリー・プライズ賞にノミネートされている。

 2ndアルバムで「他人のストーリー」を表現したGlass Animalsにとって、大きな転機となったのが、ドラマーであるジョー・シーワードの交通事故であった。デイヴ・ベイリーは、親友であるジョーが脳手術を受けるほどの交通事故にあい、しばらく「前を向けなかった」と語っている。彼はメンバーの交通事故がいかに3rdアルバム『Dreamland』に影響を及ぼしたかを説明している。

このアルバムのアイデアは、混乱と定かではない感情から来ている。親友が入院していて、予断を許さない状態だった。未来が怖くて、不透明だった。病院にいる数週間、前を向くのが難しく、昔のことばかりを考えていた。昔の記憶を掘り起こして、心地よくないものでも、そこに居心地の良さを見つけていた。(※2)

 このような出来事があったのもあり、『Dreamland』は、今までのGlass Animalsの作品以上にパーソナルな内容となっている。ジョー・シーワードが復帰するまでの間、デイヴ・ベイリーは頻繁にロサンゼルスに足を運び、6LACK、キング・プリンセス、カリードなどのアーティストたちのプロダクションに携わっていた。そこで他のアーティストたちの制作を間近で見ることにより、「自身のストーリー」を歌詞として落とし込むインスピレーションを得たという(※3)。

 この「他人の経験」と「パーソナルな経験」の組み合わせが、アルバム『Dreamland』がリリースされてから1年経った今でも「Heat Waves」が大ヒットしている理由の一つであると感じる。現役グループとして英国外で最も売れた曲になった「Heat Waves」であるが、この楽曲のMVはロックダウン中のイースト・ロンドンで隣人たちの協力を得て撮影されたものであった。デイヴはこのように語っている。

この楽曲のMVは、ライブミュージックや、ライブ文化というものへのラブレターだ。ロックダウンのピークに近所で撮影したんだ。大切なものを失い、切望し、最終的にそれを救えないことに気がつくという曲だ。(※4)

Glass Animals - Heat Waves (Official Video)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる