りりあ。新たな王道失恋ソングの完成 実体験をもとにした「私じゃなかったんだね。」切なすぎる結末

りりあ。新たな王道失恋ソングの完成

 TikTokフォロワー130万人、YouTube公式チャンネルの登録者数31万人を誇るシンガーソングライター、りりあ。からデジタルシングル「私じゃなかったんだね。」が届けられた。今年5月にTikTokで弾き語り動画が公開され、すでに大きな反響を集めているこの曲は、実体験をもとにした失恋バラード。切ない歌詞、叙情的なメロディ、儚さ、生々しさを感じさせる歌声など、彼女の魅力が詰まった名曲だ。

 2019年の秋から、TikTok、YouTubeに弾き語り動画を投稿し始めたりりあ。は一度聴いたら忘れられない天性の歌声で一気にフォロワーを増やし、RADWIMPS、back numberなどの楽曲を次々とカバー。“女性シンガーが顔出しをせず、男性ボーカルの楽曲をエモーショナルに歌う”という独自のスタイルを確立。10~20代を中心に圧倒的な支持を得た。

 人気を決定づけたのは、昨年5月に配信された初のオリジナル曲「浮気されたけどまだ好きって曲。」。友達との会話をもとに制作されたというこの曲は、タイトル通り、恋人に浮気された女の子が、好きという気持ちを捨てられずにいる姿が描かれている。SNSを通して浮気相手の“匂わせ”を知り、呆然とする彼女は〈いつでも戻ってきていいから〉と〈もうあたしに触れないで〉という二つの感情のなかで揺れる。繊細にフレーズを紡ぐ歌声も、楽曲のストーリーにピッタリだ。10代、20代を中心に定番の失恋ソングとして浸透し、同曲のMV再生回数は1,100万回を突破。また、それまでりりあ。が行っていたのと同じように、今度はこの曲自体が数多くのリスナーにカバーされるようになっている。

 2020年11月には「蛙化現象に悩んでる女の子の話。」をトイズファクトリー内レーベル「VIA」よりメジャーリリース。SNSで「どんな曲を聴きたいか」を募集し、そこで挙がった“蛙化現象”(片思いしているときは相手のことが好きなのに、両思いになった途端に興味がなくなる現象)をテーマに制作した楽曲だ。そして今年2月には「素直になりたい子の話。」も発表。“素直になれない私”、“素直になれない僕”のすれ違いをカントリー調の軽快なサウンドに乗せて表現したこの曲は、りりあ。のソングライティングの幅広さを示している。

りりあ。「私じゃなかったんだね。」
りりあ。「私じゃなかったんだね。」

 そして新曲「私じゃなかったんだね。」は、前述した通り、彼女自身の体験をもとにした楽曲。ブレイクのきっかけとなった「浮気されたけどまだ好きって曲。」に続く、王道の失恋バラードだ。

 〈私じゃないなら/もう優しくしないでよ/あんなに寝落ち通話してたくせに〉というラインが聴こえてきた瞬間、主人公の女の子の心象風景が広がっていく「私じゃなかったんだね。」。その最大の魅力はやはり、生々しくリアリティに溢れた歌詞だろう。別れることになった原因は(おそらく)彼の心変わり。彼の口癖が変わったことに気付かないふりをしていた“私”は、“この時間も無駄じゃない”と自分に思い込ませ〈勝手にハッピーエンド描いて〉いた。そして別れのシーンでは、〈他で幸せになってね/なんて嘘だよ。〉というフレーズによって、未練と諦めが混ざり合った複雑な思いを見事に描き出している。主人公の感情の変化とリンクするように、楽曲が進むにつれてエモーショナルな度合いを高めていくメロディも素晴らしい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる