kiki vivi lily、“味覚”で表現した手の届く範囲のファンタジー 生活スタイルの変化が音楽に与えた影響

kiki vivi lilyインタビュー

この2年半で日本語でしっかりと歌詞を書くように

ーーまだ夢の中で微睡んでるような朝の時間帯だけど終わりの気配がしてるんですね。「手を触れたら」は低音が効いたUSの最新のダンスポップのようなサウンドになっています。

kiki vivi lily:ひたすらに甘いことを歌いたいなと思って作ったんですけど、荒田くんとMELRAWと一緒にやってるうちにヒートアップしていって。いろいろ試したくなって、四つ打ちにしたり、今まで使ったことのないような音色を使ってみたりして、楽しく遊びながら作れた曲ですね。デカめのスピーカーで聴いていましたし、みんなで盛り上がりながら作ったので(笑)、大音量で聴くといいと思います。

ーー歌詞にはコーヒーが出てきます。

kiki vivi lily:私、コーヒーが大好きなんです。なので、「コーヒー飲もう」っていう、そのまんまの歌詞ですね。まだ声を大きくしては言えてないけど、ちょっとずつわかり始めてるのかな、くらいの恋の始まりですかね。

ーー「Yum Yum」にはShin SakiuraさんとIttoさんが参加してます。

kiki vivi lily:Shin Sakiuraさんはずっと一緒にやってみたいなと思っていた方で、お願いしたら、すぐに返事をくれて。「Shinさん節満載で、ご機嫌な曲をお願いします」と言って作っていただきました。その後、誰がこの曲に合うだろうかと考えた時に、Ittoくんが思い浮かんで。Ittoくんはずっと友達なんですけど、すごくピースフルに生きてる子なんですよね。その感じが、Shinさんが送ってくれたビートに合いそうだったので、彼にお願いして。これも二人で面白おかしく、楽しんで歌詞を描けました。

ーーIttoさんにはどんなリクエストをしたんですか。

kiki vivi lily:「味覚としては、ジャンキーなやつ」と伝えましたね。私、メキシコ料理が大好きなので、メキシカンな雰囲気をイメージした結果、ジャンキーなやつ=タコスになりました。

ーーお互いに“君”と言い合ってる歌詞のこの二人はどういう関係ですかね。

kiki vivi lily:休日のホームパーティーでノリノリな感じですね。彼女の方は友人じゃないんですけど、彼的な目線だと友人なのかもしれない。なんでもOKな感じかな。いいバイブスで軽いノリの二人ですね。どちらも“パリピ”ですよ。

ーー(笑)。続く「Whiskey」はちょっとほろ苦いですよね。

kiki vivi lily:サウンドとしては、ちょっとディアンジェロ的な要素もいれつつ、Budamunkさんとmabanuaさんがやってたユニット、Green Butterのビート感を参考にしていて。よれたビートのかなり渋いところを攻めたかったんです。歌詞は、別れてしまった二人ですね。

ーー別れてるだけ? 「Yum Yum」の流れで聴くと、相手がいる人との恋愛なのかなと思いました。

kiki vivi lily:あ、なるほど。確かにそうともとれますね。いろんな解釈があるんだな。でも、私としては、まだ若い二人の失恋なのかなって思ってます。ちょっと背伸びしてる二人。

ーーウイスキーというモチーフは?

kiki vivi lily:ずっと題名にして曲を書きたいと思っていたワードだったんですよ。バーに行くとマスターにウイスキーを出してもらったりするじゃないですか。そういう時に、絶対にいつかウイスキーで曲を書きたいと思いまして。マスターによって新しいウイスキーと出会えたりするし、思い出と結びつきやすいお酒だなと思っていて。満を持して、今回、書けたっていうのがありますね。

ーー歌詞に〈グラスパー〉(ロバート・グラスパー)が出てきますが、ちょっと大人っぽいというか、ニュージャズの要素も入ってますよね。その後は「Interlude : Tasty」が挟まれていて。

kiki vivi lily:お口直し的な曲が欲しいというのもあったんですけど、このアルバムを作ってる中で、ふとした時に自然と出てきた曲ですね。このメロディが出来たときにMacBookで録ったものをそのまま収録しています。部屋の雰囲気というか、ざっと録った感じを残したいと思って。生活の空気を感じてもらえたら嬉しいですね。

ーー日常の鼻歌感もあるんですが、甘くてドリーミーな感じもあるんですよね。

kiki vivi lily:まさに手に届くドリーミーというか、夢うつつみたいなものを目指してました。前の作品は映画やミュージカル、旅行とかからインスピレーションを受けることが多かったんですけど、今作に関しては家にいる時間が長くなったのもあるし、より自分の身の回りの日常や生活にフォーカスした曲を歌いたいなって思うようになって。『Tasty』というタイトルもそれで付けたんですけど、アルバム全体としても、歌詞としても手の届く範囲のファンタジーを描きたいなと思っていました。

ーーそれは変化の1つですよね。

kiki vivi lily:そうですね。この2年半で英語のフレーズが減って、日本語でしっかりと歌詞を書くようになりました。それが苦じゃなくなって、自然と出来ているのは変わってきていますね。あと、一貫したテーマを持って作るのも初めてだったので、『Tasty』というタイトルに寄り添っていく作業も楽しかったです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる