桑田佳祐として、音楽人としての姿勢示した全国ツアー『BIG MOUTH, NO GUTS!!』 再会果たした感動の初日公演

 もう一つのポイントは、ライブ全体を通し、“東北”への思いが伝わってきたこと。「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」の演奏時には、大型ビジョンに岩手県陸前高田の奇跡の一本松、宮城県仙台市荒浜海岸で行われた追悼式の模様などが映し出され、それ以外にも東北への想いを込めた楽曲を、東北の地の風景が映されるビジョンをバックに披露するなど、至るところに東北への想いが込められていたのだ。

 セキスイハイムスーパーアリーナは、2011年9月、食道がんの治療から復帰した桑田が初めて本格的なライブを行った会場。

 「この会場にちょうど10年前に立たせていただいて。あのときは東北、宮城のみなさんも本当に大変な状況でございましたが、私自身も病気をして、ここで復活させてもらいました。あのときは本当にありがたくて、生涯忘れられないステージになりました」「人生は何があるかわからない、いろんなことがあるんだなと、今回のコロナでも思いました。だけど、こうしてみなさんと再会できたことが何よりも幸せで。仙台に戻ってきて、みなさんにお会いできたことが奇跡のように感じます」と語り掛けると、会場からはこの日、いちばん大きい拍手が巻き起こった。

 前述した通り、“ごはんEP”はオリコン週間ランキングで初登場1位を獲得。男性アーティストとして初めて5年代(1980年代〜2020年代)連続でアルバム首位を記録。さらに昭和・平成・令和の3時代でも首位を獲得し、世代や時代を超えた人気を改めて証明した。“ルーツである洋楽や歌謡曲を桑田流のポップスに昇華する”というベーシックなスタイルに回帰した“ごはんEP”の素晴らしさ、コロナ禍におけるライブの在り方、いまだ復興の途中にある東北への想い。さまざまな要素が一つになったこの日のライブは、桑田佳祐というアーティストの魅力と胆力、溢れんばかりの享楽とシリアスな思いがたっぷりと注がれていた。その根底にあるのは、“どんな時代になっても、ポップスを通して少しでも楽しんでもらいたい”という40年以上変わらぬスタンス。本当に観られてよかったと、心から思える素晴らしいライブだった。ツアーは12月30日、31日の横浜アリーナ公演まで続く。各会場に足を運ぶ予定の方はぜひ、期待値をさらに上げて待っていてほしい。

特設サイト
https://special.southernallstars.jp/kuwata2021/live/

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