崎山蒼志が積み上げてきた音や人との繋がり 軌跡を凝縮した一夜を観て

崎山蒼志の軌跡を凝縮した一夜

 満を持して演奏されたこの日の主役とも言える新曲「嘘じゃない」はここまで高めてきた演者のテンションが最大限まで上がった瞬間だっただろう。サビ前のキメは一糸の乱れもなく、余韻のあるスネアによって引き締まる〈嘘じゃない〉から独特の震えをもった歌声とベースが絡み合い、サビ後のメロディアスなピアノがさらに盛り上げる。拡張された崎山の表現も、バンドメンバーの高揚も全て音に表れているようで、演奏された音こそが全てなのだ、と身をもって体感させられる。

 “再定義シリーズ”からの後半部は崎山の最近の軌跡を辿る構成が中心だ。間奏のギターソロやバンドにも埋もれることのない力強いストロークが「花火」を率いると、映画主題歌の「幽けき」を大坂孝之介のキーボードと共に初披露。微分音的、と自身で語っていた歌唱がオーディエンスをどんどん惹きこんでいく。

 一人に戻った崎山は「季節外れ」を演奏する。圧倒的なバンド編成を見た後にも関わらず、そこに物足りなさなどは一切ない。膨大な作曲経験と幼少期からの経験に裏打ちされたギターの弾きこなしと歌唱のニュアンスの豊富さで怒涛の展開を繰り広げる。「今日は本当にありがとうございました。気をつけて帰ってください」とあっけない一言に思わず笑みを漏らすオーディエンスを差し置いて、最後の楽曲に選ばれたのは「Youth-picnic」。スラム奏法で刻まれるビートが踏みしめるようなテンポだ。ゆっくりと歌詞がしみ込んで、怒涛の1時間と少しは幕を閉じた。

 アンコールに応えステージ上に戻ってきた崎山は、緊張が解けたのか「リハーサルと全然違いますね。本番の妙がある」「バンドメンバーが本当にエグくて……」とライブの感想に饒舌になる。「今日は貴重なお時間をありがとうございました」と丁寧に礼をすると、突き刺すようなギターがヒートアップする「ソフト」を披露。薄暗い歌詞と正直な歌声が最後に崎山の真髄を強調した。

 崎山の軌跡を凝縮したこの日のライブ。我々は、さらに加速するであろう彼の成長と拡張を目にしていくことだろう。

■セットリスト
01. 過剰/異常
02. 塔と海
03. ろうそく
04. 24
05. むげん・
06. 潜水
07. 逆行 ドラマ「賭ケグルイ双(ツイン)」主題歌
08. find fuse in youth
09. Undulation
10. Samidare
11. 嘘じゃない TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」EDテーマ
12. 花火
13. 幽けき 映画「かそけきサンカヨウ」主題歌
14. 季節外れ
15. Youth-picnic
En. ソフト

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