DREAMS COME TRUE×『ソニック』30年越しコラボの軌跡 ゲームミュージックとJ-POPの融合から生まれたグローバルポップ

 まず聴こえてくるのは、ホーン、ストリングスを中心とした壮大にしてファンタジックなイントロ。さらに『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の音源をそのまま使ったシンセのメロディと〈今日は ヒトユメ ご一緒しませんか〉というライン。旋律や音色は『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のサントラを完全に投影しつつ、吉田美和の歌と歌詩を融合させることで、“30年の時を経た、ドリカムの最新ポップス”に昇華させているのだ。2コーラス目からは4つ打ちのビートが加わり、ダンスミュージック的な疾走感と高揚感がアップ。新たに制作されたサビのメロディが心地よい解放感を生み出し、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』が持つエンタメ性とドリカムの真摯なメッセージが共鳴し合う瞬間も、この楽曲の大きな聴きどころだ。 

 このマッシュアップのセンスは、じつはドリカムの王道でもある。70〜80年代のディスコやソウル、ファンクなどを誰もが楽しめる、そして、普遍的なクオリティをたたえた日本のポップスに結びつけてきたドリカム。その最新モデルが、「次のせ〜の!で - ON THE GREEN HILL - DCT VERSION」なのだと思う。

 すべての中心に吉田美和のボーカルと言葉がしっかりと存在しているのも、この楽曲の“ドリカムらしさ”につながっている。中村が紡ぎ出した「Green Hill Zone」のメロディをまったく変えることなく、〈ミドリの丘を 転がり上がって〉というラインによってリスナーに爽快さと力強さを感じさせる歌、歌詩、フロウはやはり絶品。特に〈ヒトユメ フタユメ 叶えるイッポ ほらせ〜の!で〉というフレーズには、聴く者の心を持ち上げ、背中を押してくれるようなパワーに溢れている。曲調はまったく違うが、「何度でも」「その先へ」「さぁ鐘を鳴らせ」の系譜を感じさせる、ドリカムの新たなパワーソングと言っていいだろう。

 カップリングには「次のせ〜の!で - ON THE GREEN HILL - MASADO & MIWASCO VERSION」を収録。オートチューン的なエフェクトを施したボーカル、8bitを想起させるトラック、80’s的なシンセサウンドを含め、レトロフューチャー系のダンストラックに仕上がっている。本作のCDジャケットで『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のビジュアルと初コラボしている“MASADO & MIWASCO”は、“ヴァーチャル・ドリカム”として活動しているアバターアーティスト。

 今年1月21日には『VTuber Fes Japan 2021』のネット空間に設置された“PREMIUM DOSCO”STAGEに登場。3月24日にはテレビ番組『Premium Music 2021』(日本テレビ系)で「決戦は金曜日 - DOSCO prime Version –」をパフォーマンスし、大きな話題を集めた。さらに5月には『日比谷音楽祭2021 開催直前オンラインスペシャル』、9月には世界初のパラリンピック公式ゲームにて、ヴァーチャルライブ『ヴァーチャル・ドリカム 「Let’s Evolve!」~進化~』を開催するなど、活躍のフィールドを広げている。“こっちのドリカム”(リアル)“あっちのドリカム”(ヴァーチャル)を行き来するスタイルは今後、さらなる発展を遂げそうだ。

 “吉田美和の歌と歌詩を多くの人に届ける”という結成以来のテーマを掲げたまま、幅広いメディアとジャンルを取り込みながら、ポップミュージックの可能性を広げ続けるDREAMS COME TRUE。90年代と20年代、日本と世界をつなぐ『次のせ~の!で - ON THE GREEN HILL -』は、現代的なグローバルポップとして多くのリスナーを魅了するだろう。

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