折坂悠太、表現への問いかけが宿った新作『心理』 柴那典が感じた音楽家としての凄み

折坂悠太『心理』表現への問いかけ

 こうしたアルバムの内容は、ここまで3年の折坂悠太の歩みを考えると、とても印象深いものでもある。

 2018年にリリースされたアルバム『平成』で大きな注目を集めた後、折坂悠太の歌は、より大衆性を持った場所へと開かれてきた。

 2019年には、フジテレビ系月曜9時枠ドラマ『監察医 朝顔』に主題歌「朝顔」を書き下ろし、8月に同曲を配信リリース。2020年には映画『泣く子はいねぇが』の主題歌と劇伴音楽を担当し、11月にその主題歌「春」を配信リリース。12月にはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に登場し、「朝顔」と「トーチ」を披露している。

 そして今年3月には表題曲に加え『監察医 朝顔』の第2シーズンで挿入歌に起用された「鶫(つぐみ)」などを収録したEP『朝顔』をリリース。さらに2021年4月には「サントリー角瓶」CMソングとして「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバーがオンエアされ、こちらも配信リリースされている。

 ここ3年、ドラマ、映画、CMなど様々なメディアを通して、彼の声を耳にする人が増えていった。今年1月には『MUSIC FAIR』で地上波の音楽番組に初出演。4月には『ミュージックステーション 3時間SP』に出演している。より多くの人が彼の歌に触れ、その一方で、折坂悠太自身もJ-POPというフィールド、今の時代の大衆音楽に向き合う経験を重ねてきた。

 新作には、その足跡から得たものも結実しているように思える。もちろん、アルバムは輪郭のくっきりしたリズムやメロディが主流の現在のJ-POPのメインストリームに“寄せに行った”ような内容にはなっていない。むしろ独特の揺らぎに満ちたサウンドの方向性はその逆だろう。しかし、そうした手法でありつつ、ポップソングとしての強度を持っているのが、このアルバムの“凄み”でもある。

 聴いたことがないはずなのに、なぜか、身体に馴染む。歌が風土というものに根ざしている。

「大衆音楽とは、本来、そういうものなのではないか――」。

 折坂悠太の新作からは、そんな問いかけも、感じてしまう。

■リリース情報

『心理』
発売:2021年10月6日(水)
https://orisaka-yuta.lnk.to/shinriCD
初回限定盤(CD+DVD)¥5,280(税込)
通常盤(CDのみ)¥3,300(税込)
DVD収録内容(初回限定盤のみ)
折坂悠太単独公演2021<<<うつつ>>>
2021年6月4日(金)東京・USEN STUDIO COAST
Live & Tour Document
ライブ映像に加えて、映像作家の河合宏樹によるドキュメンタリー映像も収録

■イベント情報
折坂悠太『心理』オンライン先行試聴会
9月19日(日)第一部
アルバム全曲試聴 + トーク
OPEN 18:00 / START 19:00

9月20日(祝・月)第二部
アルバム全曲試聴 + トーク
OPEN 18:00 / START 19:00

参加者応募:https://orisakayuta.jp/shinri/

※アルバム全曲試聴はどちらも同じ内容。
※アーカイブ配信なし。

■ツアー情報
『心理ツアー』
大阪 10月29日(金) サンケイホールブリーゼ
広島 10月30日(土) 広島JMSアステールプラザ 中ホール
愛知 11月2日(火・祝前)芸術創造センター
宮城 11月6日(土)日立システムズホール シアターホール
福岡 11月20日(土)福岡国際会議場 メインホール
北海道 11月22日(月・祝前) 共済ホール
京都 11月26日(金)ロームシアター京都 サウスホール
東京 12月2日(木) LINE CUBE SHIBUYA
チケット一般発売中
詳細は以下公式サイト、『心理』特設サイトへ。

『心理』特設サイト
https://orisakayuta.jp/shinri/
公式サイト
https://orisakayuta.jp/

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